かすり傷も痛かった/箕輪厚介

 

 

 この本、2018年に出版された『死ぬこと以外かすり傷』という「意識高い系」に絶大な支持を受けた自己啓発本を全文収録した上で、著者の箕輪厚介さんがセクハラで「文春砲」を受けた後の心境変化を追収録するカタチで構成された本です。

 

 箕輪厚介さんと言えば、双葉社在勤中に幻冬舎を立ち上げ伝説の編集者とされる見城徹さんの自伝的な著書『たった一人の熱狂』を手掛けたことで広く知られるようになり、その後、見城さんの幻冬舎に移り、堀江貴文さんの『多動力』、SHOWROOMを立ち上げた前田裕二さんの『メモの魔力』、佐藤航陽さんの『お金2.0』など大きな話題をまいたヒット作を次々と手掛けられカリスマ編集者としてもてはやされるようになり、ビジネス書レーベルNewsPicks Bookを成功させ、編集者としてはおそらく初めてのオンラインサロンを主宰されるなど飛ぶ鳥を落とす勢いだったのが、セクハラでの「文春砲」に合い、「多くを失った」とおっしゃっていて、その心境を『死ぬこと以外かすり傷』に朱書きをするようなカタチの『かすり傷も痛かった』パートで語られています。

 

 ご自身が活躍されていた『死ぬこと以外かすり傷』が出版された当時もてはやされていた「意識高い系」に大いなる支持を受けたこともあって時流に乗ったということもあったと思うのですが、いつまで経っても給料や経済が好転しなかったり、コロナ禍といった状況を経てどこか日本全体が疲れてしまった結果、「意識高い系」がウザがられるようになったタイミングで「文春砲」を食らったのかも知れません。

 

 そういう「意識高い系」がウザがられるようになった原因について、「意識高い系」の人たちが何かに取り組む際に、何でもかんでも「競技化」してしまってギスギスさせてしまうからだとおっしゃられているのが印象的で、自分たちのテリトリーに「意識高い系」が入ってくるのを敬遠するような空気が広がったからなのではないかということです。

 

 「文春砲」でヘコンだ風を装いながらも、かつての自身のヒット作を否定するようなカタチで心境の変化を盛り込む体裁をとるあたりは、サスガにカリスマ編集者の面目躍如たるところかな、というところです。

 

 逮捕後の堀江貴文さんが『ゼロ』などを出版されて一時期しおらしい心境を吐露されていましたが、その後また毒を吐きまくっているように、箕輪さんもほとぼりが冷めれば、というか喉元を過ぎればまた大暴れ…というような気もしますが、まだまだお若いですし、気力を取り戻してまた編集者としてワクワクするような本を作り出して欲しいと思います…っていうか、この本もじつはネタ!?(笑)