笑いのある世界に生まれたということ/中野信子、兼近大樹

 

 

 脳科学者の中野センセイがEXITの兼近さんとお笑いを語るという異色作です。

 

 中野センセイは多くの対談本を出版されていますが、今までは年上の男性か女生徒のモノが多かったので、若い男性とのモノは多分初めてで、ビミョーに上から目線の中野センセイが新鮮です。

 

 意外な組み合わせではあるのですが、さんまさんの番組で共演したのを機に、兼近さんのYouTubeでのお勉強やり直し企画で家庭教師を買って出たということもあって、お笑いが好きだという中野センセイのお気に入りだということで実現したようです。

 

 チャラ男キャラで中卒をウリにしている兼近さんが東大卒の学者との対談だということでかみ合うのか!?という危惧もありますが、中卒なのは事実だとしてチャラ男は「作られた」キャラだとこの本の中で言及されているとともに、勉強にはあまり縁がなかったモノの、中野センセイがこの本の中で兼近さんの地アタマの良さを再三指摘されているように、対談の中でかなり鋭い指摘を再三繰り出しており、なかなかに読みごたえがあるかみ合いっぷりです。

 

 脳科学者ということで、お笑いを脳科学的に…という想像をしますが、冒頭でそういう分析的なアプローチは否定されていて、まあ職業柄、お笑いへのアプローチについて語られる際に脳科学的な根拠みたいなモノは語られていますが、それ程分析的な語られ方はされていません。

 

 ただお笑いのターゲティングみたいなハナシでは正規分布を交えて、代表的なコメディアンのポジショニングについて語られていますが、兼近さんがEXITのターゲティングについて割と戦略的に対峙されていることを明かされていたり、かなりネタを綿密に練られて試行錯誤を重ねた上でのブレイクだということを告白されているのが印象的で、やはり昨今「売れる」芸人というのはそれなりというか、我々の想像以上にその裏付けがしっかりとしていることを改めて印象付けられます。

 

 そういうアプローチについて、中野センセイがアカデミックな背景を語られていて、「ウケる理由」がより深く理解でき、お笑い好きで普段あまり本を読まない人たちにも、兼近さんをトリガーにして手に取ってもらいたい興味深いモノでした。