近年、「発達障害」というコトバが頻繁にクローズアップされるようになって、ようやく少しずつその実態が理解され始めているようですが、それでもまだまだ言われのない叱責を受けたりと本人も周囲の人もツラい想いをされていることが少なからずあるということで、認知神経科学者で発達障害の実態を研究されている方が、その一端を紹介された本です。
この本では「発達障害」と言われる状況の中でも、特に自閉症スペクトラム障害(Autism Spectram Disorder:ASD)とされるモノの実態を詳細に紹介されて、ASDを抱えている人たちがどういうことに悩んでいて、どういう行動をするのかについて紹介されています。
ASDだけでなく、発達障害とされる人々は、それ以外の人から見ると一見「奇行」と思える行動をとることがあるのですが、それにはそういう行動をとらざるを得ない深刻な理由があるということで、そういう「原因」を詳らかにして、必要な対策を周囲も理解することで、お互い随分とラクに生活して行けるようになるということで、著者の井出先生はご自身の研究の成果を臨床に活用してもらうためにということで、この本の出版を始めとする啓発をされているということです。
例えば、体操服だったり制服だったり決められた服を着ることを嫌がるという現象について、ASDの方の一定の割合に「感覚過敏」の人がいるということで、体操服を着るということがかなりの苦痛を伴うということで、単なるワガママではないということを周囲が理解することが重要なようです。
また「感覚過敏」を持つ人は、大体同時に「感覚鈍麻」という極端に鈍感に見えるところも併せ持つ人が多いということで、そういう矛盾した状況もASDの特徴だということを、本人と周囲が理解することがスムーズに日々の生活を進めるために必要だということです。
井出先生の研究を経て、多くの「症状」が紹介されていますが、まだまだ知られていないモノも多く、何か周りと「合わない」と思うことがあったら、躊躇せずに周囲の人や専門家に感じていることを相談するように勧められていて、積極的に理解を求めていることが本人にも周囲にも意義のあることだということの周知が進んでいって欲しいところです。