以前『仕事と家族』を紹介した計量社会学者の筒井淳也さんが「数字」の捉え方について語られた本です。
数字というと無機質なイメージを持つ人が多いんじゃないかと思いますが、その数字というのは常に数えた人の隠された「意図」があるものだということを指摘されており、その「意志」の込め方、みたいなものを全体を通して語られています。
そもそも「数字」を「数える」こと自体が、一般人が何となく感じているより遥かに難しいことなんだということをおっしゃられています。
統計学とかになじみの少ない人だと「どういうこと!?」ってなってしまうんじゃないかと思うのですが、そもそも「数える」対象を決めること自体、意外と単純なことではないということを再三強調されています。
例えば、以前なら何のギモンを抱くことが少なくなかった「性別」ごとの人数ですが、昨今はLGBTQ+ということで、どこまで分類を細分化していいのか、アタマを悩ませることになりつつあります。
そんなある意味単純な分類すらも怪しくなってきているということで、複合的な条件を満たすものを「数える」際に、その精度を上げることは容易ではなく、場合によってはとてつもないコストがかかるということで、多くの場合は一定の割り切りの下に「数える」ことが通例のようです。
そんないい加減な「数字」を集めても仕方がないんじゃないか!?と思われるかもしれないのですが、それでも「ないよりはマシ」なんだそうで、如何に使用目的に叶った「合理的な数字」を準備するのかが重要で、その「数字」の「選び方」を認識しておくことが、その「数字」を活用する上では不可欠なんだそうです。
また、中にはわざと誤認させることを意図したようなモノもあるようなので、そういう「意図」を見透かすことも、「数字」を読む上では重要なんだそうです。
割と統計学の専門的な方法論も交えて語られているので、決してとっつきやすいモノではないのですが、なんとなく裏に隠された「意図」があるんだなぁ、ということを意識して「数字」を見るようにするだけでも、「数字のセンス」が磨かれていくのかもしれません。