高学歴難民/阿部恭子

 

 

 いわゆる超氷河期に就活だった世代を中心に、高学歴なのに貧困にあえぐ人がいて、そういう人が深刻な犯罪に手を染めたりと、大きな社会問題となって、今更ながら政府も就労支援に乗り出したワケですが、そういった「高学歴難民」の実情を紹介された本です。

 

 この本の中では、ポスドクや留学経験者、司法大学院への進学者など「高学歴難民」と言われる人の中でもひと際「高学歴」感が強い人であるにもかかわらず、貧困にあえぐケースを紹介されていて、かつての「学歴信仰」が最早それ程の有効性を持たないにもかかわらず、未だ「信者」は引きも切らず、不幸の再生産を繰り返しているようです。

 

 そもそも日本の教育自体が大量生産工業にフィットするような従順で勤勉な人材を数多く育成するようにできていて、「高学歴」な人々は、ある意味忠実にその仕様にフィットしていることになるワケで、逆にそれが、昨今の激動の状況に対応することができないことで、「難民」となっているということのようです。

 

 そういう「高学歴難民」はプライドが高いことが多く、体面を取り持つために犯罪に手を染めたり、女性だったら風俗に頼ったり、さらには、自ら命を絶つ人もいるということです。

 

 ある程度、「妥協」ができればこういうことにはならないのかもしれませんが、過度に学校教育に順応してしまうと、こういうことになってしまいかねないということで、ある意味教育の恐ろしさを見せつけられたような気すらします…