日本の歴史を読み直す/網野善彦

 

日本の歴史をよみなおす (全) (ちくま学芸文庫)

日本の歴史をよみなおす (全) (ちくま学芸文庫)

 

 

 この本も本田健さんの『読書で自分を高める (だいわ文庫)』で推薦図書として挙げられているものです。

 以前、出口治朗さんの『仕事に効く教養としての「世界史」』で、歴史を、一般的な政権の移行という大きな流れに従って、「輪切り」的にとらえるのではなくて、ある一定のテーマに沿って「タテ」に切り出すことによって、その世界における歴史の流れが生き生きと感じられることに驚いたのですが、この本は日本史におけるいくつかのテーマで、同様の手法で語られます。

 個々のテーマで、文化的だったり風俗に関することで、フツーに歴史を学ぶよりも、そのテーマについては生き生きとした空気を感じるのですが、如何せん学者先生が書かれたこともあり、研究者的にいうと重要なことなんでしょうけど、我々一般人が読むと、枝葉末節に捉われているように感じることがあり、出口さんの本ほどのダイナミズムを感じることができなかったのは、ちょっと残念ではあります。

 ただ、「日本は本当に農業主体の国家だったのか?」とか、「日本における女性の地位はどのように変わって来たのか?」といった、通常の歴史の本では「流れ」をとらえることのできにくかったテーマについての推移が紹介されているのを読むことで、歴史に新たな光を当てることになっているのは、非常に意義のあることかな、と思います。