鎌田式「にもかかわらず」という生き方/鎌田實

 

鎌田式「にもかかわらず」という生き方

鎌田式「にもかかわらず」という生き方

  • 作者:鎌田 實
  • 発売日: 2020/12/09
  • メディア: 単行本
 

 

 コロナ禍以降精力的に執筆活動を進められている鎌田先生の近刊です。

 

 おそらくコロナ禍に伴う閉塞感の中で様々な局面でストレスを抱える方々を励まそうという意図があるのかと思われます。

 

 この本は、「にもかかわらず」生き方ということなのですが、高齢だったり病気だったりお金の悩みだったりといった様々な逆境を抱えつつも、明るく前向きに生きる人の姿を紹介しつつ、コロナ禍という逆境において、そういう風に前向きになるための在り方を織り交ぜて紹介されています。

 

 感染対策ということで、どうしても内向きの指向になってしまって欝々とした方向性に行ってしまいがちだということで、何とかそのベクトルを外に向けようということなのですが、まずは最悪家に閉じこらないといけないとしても、特にふくらはぎを始めとした足回りを中心にストレッチや筋トレをすることで脚力を維持することを心がけるのを最低線として、できれば人手の少ないところや時間帯を選んで散歩をすることが効果的だとおっしゃいます。

 

 また、「にもかかわらず」という生き方の事例も、鎌田さんが関わってこられた著名人のエピソードも盛り込まれていて、ダンディズムに殉じた菅原文太さんの生き様など、なかなかマネができることではないことも紹介されてはいますが、どこか励まされる気になるエピソードが満載ですので、クサクサしたキモチを和らげるためにも手に取られてみては如何でしょうか!?

面白くて眠れなくなる宗教学/中村圭志

 

面白くて眠れなくなる宗教学

面白くて眠れなくなる宗教学

  • 作者:中村 圭志
  • 発売日: 2018/01/26
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

 先日『教養としての仏教入門』に感銘を受けた中村圭志さんが「面白くて眠れなくなる」と題した様々なジャンルの学問の入門編シリーズの宗教学の本を書かれていると知って手に取ってみました。

 

 そもそも元々全くと言っていいほど宗教には興味がなかったですし、弱者を食い物にするとすら思っていたのですが、ヨメの寺社仏閣参りに影響されて仏教に興味を持ったのをキッカケに宗教関連の本にハマっている次第です。

 

 あまり意識はしていなかったのですが、「宗教」そのものと「宗教学」の違いを冒頭に掲げられており、

 「宗教は信じるもの。宗教学はその宗教を観察し、比較するもの」

とされています。

 

 さらにその「宗教学」の観察対象となる「宗教」の定義として、よのなかのモノを「聖」と「俗」に分けて「聖」なるものをあがめるものだということで、「聖」なるものが神だったり仏陀だったりするということですが、その研究対象は「宗教」として確立されたモノだけではなく、民俗学の研究範囲となる土着の精霊信仰みたいなものも守備範囲となるということです。

 

 そのあとで世界の主要な宗教と、宗教と人々の様々な関わりが紹介されています。

 

 日本人は、ワタクシ自身を含めて「無宗教」であることを主張する人が多いということですが、日本人は生活の中の様々な側面で、宗教的な事象を取り入れていることを指摘されていて、特に帰依する宗教はないものの、かなり宗教的な色彩の強い民族だとおっしゃられているのが印象的です。

 

 当然日本人だけではなく、世界中の人々が宗教との何らかのカタチでのつながりがあるワケで、近代国家における政教分離原則も、宗教がそれだけ政治とのつながりが深いことの裏返しであり、文学や芸術が宗教の影響の下に発展してきたことも見逃せません。

 

 そういう宗教と人々の関わりが端的に網羅的に言及されており、やはり中村さんのプレーンな姿勢ゆえなのか、かなり分かり易いモノとなっています。

 

 結局は人間は宗教の影響からは逃れられないということなのですね…

 

文在寅時代の韓国/文京洙

 

文在寅時代の韓国: 「弔い」の民主主義 (岩波新書)

文在寅時代の韓国: 「弔い」の民主主義 (岩波新書)

  • 作者:京洙, 文
  • 発売日: 2020/11/24
  • メディア: 新書
 

 

 在日韓国二世の政治学者の方が語られる文在寅政権にまつわる話です。

 

 日本人にとっては、文在寅大統領は災厄としか言いようのない相手なワケですが、そういう存在をできるだけプレーンに語ろうというのがこの本の趣旨だと、冒頭で語られています。

 

 よく知られているように、文在寅氏は、大統領から離任後、ご当人にとっては言われのない罪状で追及され自死を遂げた廬武鉉元大統領の側近だったということで、その長い弔い合戦の末に大統領になったということで、韓国の中ではかなり左翼の方に寄った政権と位置付けられるようですが、作者である文京洙さんは、金大中~廬武鉉~文在寅の流れを人権を重視する政権という風に評価されているようで、その間に来る李明博~朴槿恵政権をバックラッシュとまで言っており、自身ではプレーンと言うものの、韓国人の目から見てもかなり左寄りの視点だということを意識しながら見た方がいいかも知れません。

 

 ということで、ある程度文在寅政権の施策を、平均的な韓国人と比較すると高く評価をしているということもあるので、曺國氏の法相起用に伴う混乱や、最低賃金引き上げの失敗など、失政にも多少は触れられているものの、不動産に関連する失政や、北朝鮮との外交に関する蹉跌にはあまり触れられておらず、しかも対日外交については、概ね日本の頑なな態度に言及するのみで、国軍による海軍旗拒否や、一つ間違えれば交戦状態になったかもしれないレーザー照射などには一切触れられておらず、日本人から見ればおおよそプレーンとは思えない感じですし、平均的な韓国人から見ても政権よりと見られても仕方ないスタンスのように思えます。

 

 ただ、政権交代の振れ幅の大きさを見ていると、日本の長期政権がもたらした閉塞感も相当な弊害をもたらしているとはいうモノの、韓国人の知性、胆力、行動力を見れば、もっともっと国力は伸長していたはずなんだろうなぁ…と思うと、何かもうちょっと政権交代が穏やかに行われるような施策が実現すればいいのに…とは感じた次第です。

スポーツアナウンサー/山本浩

 

スポーツアナウンサー――実況の真髄 (岩波新書)

スポーツアナウンサー――実況の真髄 (岩波新書)

  • 作者:山本 浩
  • 発売日: 2015/10/21
  • メディア: 新書
 

 

 メキシコW杯アルゼンチン-イングランド戦でのマラドーナの5人抜きゴール時の”マラドーナ”3連呼など、数々のサッカーでの名実況で知られる伝説的な元NHKアナウンサーの山本さんが語られるスポーツ実況論です。

 

 サッカーでの実況が有名ですが、NHKのアナウンサーなんでサッカーばかりと言うワケにはいかないということで、様々な競技のことも語られていますし、テレビの放送にまつわる技術の進化に伴う放送そのものの進化や、スポーツ中継の段取りなど、様々な要素のが盛り込まれていて、日々スポーツ中継を楽しみにしているワタクシとしては、なかなか興味をそそる内容が満載です。

 

 スポーツ中継における実況なんていうと、それはそれで難しいとは思うのですが、アナウンサーはただ目の前の出来事を伝えているだけと思う向きも少なからずあるはずですが、かなり広範な役割を果たされていることに驚きます。

 

 山本さんはスポーツの持つリズム感を重視されていて、野球なりサッカーなりのリズム感があって、それを損なわないように心を配られているようです。

 

 特に日本のテレビ局におけるスポーツの実況では、伝統的なニーズの関係か、野球の中継に携わる人が多いということで、どうしてもその経験に引きずられることが多いようで、野球のような切れ目が少ないサッカーの中継には苦労されることも多いようです。

 

 さらに動きの少ないクレー射撃の中継で苦労されたエピソードも紹介されていますが、おそらくオリンピックくらいでしか中継の機会もないでしょうし、視聴される方は割とコアな層が多いでしょうから、苦労されたことでしょう。

 

 昨今、特にサッカー中継でやたらと絶叫するアナウンサーが見受けられますが、山本さんはそういう”絶叫系”について、自然に試合の盛り上がりにつれて出てくるものであれば有効ではあるモノの、ムリヤリ盛り上げようとそれをやってしまうと、かなりスベッてしまって、見ている側がシラケてしまうことになりかねないということで、使い方には相当慎重になった方がいいとおっしゃいます。

 

 そういう風に山本さんは如何に視聴者がその試合を楽しめるかということにフォーカスして、しかもスポーツの魅力の粋をよく理解してそれを的確に伝えようとしたからこそ、伝説のアナウンサーになったんでしょうね…

池上彰のよくわかる世界の宗教 アメリカの宗教

 

池上彰のよくわかる世界の宗教 アメリカの宗教

池上彰のよくわかる世界の宗教 アメリカの宗教

  • 作者:池上彰
  • 発売日: 2016/11/30
  • メディア: 単行本
 

 

 『仏教』編、『キリスト教』、『イスラム教』編と紹介してきた『池上彰のよくわかる世界の宗教』ですが、「アメリカの宗教」編というのがあるということで、どんなものかと思って手に取ってみました。

 

 それぞれ個別の宗教を取り上げてこられたシリーズに、いきなり「アメリカの宗教」というのも唐突感がありますが、やっぱりキリスト教それもプロテスタントが大半を占めるアメリカではありますが、かつては「人種のるつぼ」と言われた(今は「サラダボウル」と言うそうですね!?)アメリカだけに、宗教の多様性が世界に及ぼす影響は大きいということで、敢えてこういうカタチを取られたのかも知れません。

 

 イギリス国教会により迫害されたプロテスタントアメリカ大陸に渡ってアメリカ合衆国建国に至ったということもあって、未だにアメリカ人の約40%がプロテスタントということですが、その後アイルランドから逃れてきたカトリックや、ナチスの迫害から逃れてきたユダヤ人など、様々なバックグラウンドを持つ人が集まった結果、そういう多様性を形成したようで、当初はカトリックユダヤ教も迫害を受けたようですが、それぞれがアメリカ国内で影響力を増していく中で次第に宗教に寛容な空気が形成された部分もあるようです。

 

 さらには過酷な差別でキリスト教に絶望した黒人が公民権運動の過程でイスラム教に傾倒していくということもあったようですし、アーミッシュモルモン教などの新興宗教にもつながっていったようです。

 

 信者の割合こそ異なるモノの、言ってみれば世界中の宗教のショーケースとも言える状況が、アメリカのグローバリズムを象徴しているのかも知れません。

池上彰のよくわかる世界の宗教 イスラム教

 

池上彰のよくわかる世界の宗教 イスラム教

池上彰のよくわかる世界の宗教 イスラム教

  • 作者:池上 彰
  • 発売日: 2016/11/30
  • メディア: 単行本
 

 

 『仏教』編、『キリスト教』編と紹介してきた『池上彰のよくわかる世界の宗教』ですが、本日は『イスラム教』編を手に取ってみました。

 

 ひと頃、イスラム教のことが知りたくて色々と手に取ってみましたが、やっぱり児童書というか中学生くらいをターゲットにした入門書だと、情報の取捨選択がよく練られていますし、書き手が池上さんということもあって、非常に理解しやすいモノでした。

 

 どうしても日本にいると、アメリカを始めとする西欧キリスト教国からの視点でイスラム教を見てしまいがちですし、昨今ではイスラム原理主義者たちの過激な行動ばかりがクローズアップされてしまうことから、イスラム教に対して、かなり懐疑的な見方をする日本人が少なくないように思えますが、そういう方々に是非ともこういうベーシックな知識を持って、イスラム世界のことを見てほしい気がします。

 

 元々、イスラム教はユダヤ教から分化した宗教だということもあって、ユダヤ教キリスト教と同一の神をあがめるもので、イスラム教の教義では、開祖である預言者ムハンマドとともに、イエス・キリストのことも預言者として認めているということですし、イスラム教の考えの下にある国家であっても、必ずしもイスラム教を強いられることが無いという融和的な面を持つようです。

 

 ただやっぱり十字軍に始まって、イスラエルを焚き付けるところまで、西欧諸国がかなりイスラム世界にチャチャを入れてきたことが西欧と中東との軋轢になったことは否めないようで、そういうところもちゃんと直視すべきなんでしょうね…

 

 あまりに生活様式が違うところと、ISを始めとする過激派が認識をゆがめているところは多分にあるんでしょうけど、そういうところも含めてプレーンな視点でムスリムを見たいところですね!?

池上彰のよくわかる世界の宗教 キリスト教

 

池上彰のよくわかる世界の宗教 キリスト教

池上彰のよくわかる世界の宗教 キリスト教

  • 作者:池上 彰
  • 発売日: 2016/11/30
  • メディア: 単行本
 

 

 先日紹介した『池上彰のよくわかる世界の宗教 仏教』が、端的にポイントとなることをコンパクトにまとめられていたのに感心したのですが、『池上彰のよくわかる世界の宗教』というシリーズになっているので、キリスト教編を手に取ってみました。

 

 こちらはキリスト教の起源ということでユダヤ教から、預言者イエス・キリストが出現してキリスト教ということで分岐し、その後世界宗教として広がっていく経緯などを紹介されているとともに、関連の深いユダヤ教イスラム教との関連、儀式などの信仰の在り方などに触れられています。

 

 ただ、仏教編では割と基本的な考え方をみっちり紹介されていたのですが、キリスト教編ではそういった教義みたいな内容への言及はサラッとした感じで少ない印象でした。

 

 一応、日本で最大の信者数を持つ仏教の教義をみっちり解説して、キリスト教のそういう部分への言及が少ないのが不思議な気はしますが、どっちかっていうと最近の日本人はキリスト教的なモノの考え方に馴染む人の方が多いのかも知れません。

 

 十字軍の遠征に伴うイスラム世界との闘いや、宗教改革イギリス国教会の出現など、かなり様々に分化していく過程を紹介されていて、20億人という世界最大の信者を持つ宗教になった所以に、柔軟に地元の宗教との融合を図っていった様子が伺えます。

 

 まぁ、キリスト教はあまりにも論点が多いので、なかなか割り切った物言いがしにくい部分はあるのかも知れませんが、コンパクトに知りたいことがまとまっているという意味では仏教編程ではありませんでした。