食べて強くなるサッカーの栄養と食事/久保田尚子

 

 

 管理栄養士でFC東京で栄養アドバイザーを務められている方が『サッカークリニック』誌に連載されている記事の集大成ということで出版された本ということです。

 

 ワタクシ自身サッカーをするワケでも、サッカーをする子どもがいるワケでもないのですが、お迎えの息子さんたちが以前全国レベルで活躍されていた頃に、お肉は鶏むね肉にするなどかなり食事に気を遣われていたということを思い出して、やはりそのレベルになると、そういうところから考えないといけないんだな、ということでひょっとしてワタクシのマラソンにも役立つかと思って手に取ってみました。

 

 スナック菓子を食べて炭酸飲料を飲んでというのはあんまりよくないというのは、サッカーをしていたり、サッカーをしている子どもをお持ちの親御さんなら認識しているでしょうし、あんまり揚げ物ばかり食べるのも…と思っているでしょうけど、そういう栄養素だけではなく、個人的に印象的だったのが「食べるタイミング」についてのアドバイスで、試合だったり練習の直前に食べるのはキモチが悪くなるというのは経験則で分かるようになるでしょうけど、数時間前に何を食べればよいか、どうしても直前に食べたいときに何を食べたらいいか、試合or練習のあと、すぐに本格的な食事を摂れない場合に、補食として何を摂ればいいかなど、試合や練習が効果的になったり、疲れやダメージを最小限にするなど、食事に気を遣うことでカラダが出来上がっていくだけでなく、ケガを回避することにもつながるというのは目からウロコで、プレーのレベルはともかくとして、色んな意味でのレベル向上につながるんだというのは印象的で、特に成長期でサッカーをされているお子さんをお持ちの親御さん方は、こういうところに気を配ってあげて、キモチよくプレーできるようにしてもらいたいです!

飯は食えるときに食っておく寝れるときは寝る/ぱやぱやくん

 

 

 陸上自衛隊での経験を基にした自己啓発書でしられるぱやぱやくんですが、この本のまえに「自衛隊あるある」みたいな本は出版されているのですが、自己啓発書としては第一弾のようで、陸上自衛隊での経験からの教訓にフォーカスされた内容になっています。

 

 本編の冒頭で、陸上自衛隊での経験から得た教訓として、

  「時がすべてを解決する」

  「始まれば終わったようなもの」

  「辛いと思うな、辛くなる」

  「寝れるときは寝ろ」

  「飯は食えるときに食っとけ」

  「日が昇らない夜はない」

  「ポジティブな言葉を言え」

  「辛いときは笑え」

と8つのことを挙げられていて、陸上自衛隊を離れた今もなお役立つマインドセットだとおっしゃいます。

 

 特にタイトルにもなっている「飯は食えるときに食っておく寝れるときは寝る」は任務を遂行していく上でも相当重要なようで、疲労と空腹と寝不足が及ぼす悪影響について協調されていて、それらがあると冷静な判断が難しくなるということで、都度都度の判断が生死にも関わりかねない自衛官としては、常に仮眠や摂食の計画も作戦の中に組み込まれるようです。

 

 いきおい陸自帝国陸軍の悪しき伝統を受け継いでか、精神論に頼りかねない傾向もうかがえそうですが、アメリカとの共同訓練などでも人間の生理に基づく科学的な裏付けを持ったノウハウを叩きこまれるようで、サスガはリアリズムの権化であるUS ARMYだけのことはあるなぁ、と思わされます。

 

 ぱやぱやさんによると、自衛隊に入ってくるのは必ずしもムキムキのマッチョマンだったりメンタルモンスターだというワケではなく、中には腕立て伏せを一度もできないような人もいるようで、そういう一般市民とさして変わるところのない人が過酷な任務を遂行できるようにするということで、ぱやぱやさんの紹介するノウハウには傾聴すべきモノが多いような気がします。

日本インテリジェンス史/小谷賢

 

 

 戦後の日本におけるインテリジェンス活動の歴史を辿った本です。

 

 戦前は日露戦争前後の対ロ対策において、多大な成果を上げた日本のインテリジェンス活動ですが、その後、陸軍、海軍双方のセクショナリズムで停滞し、破滅へと至るワケですが、その後軍部の解体とともに、インテリジェンス活動の体制もある意味ゼロからのやり直しとなって、しかも吉田内閣以降、対米追従の姿勢を貫いたことから、かなりインテリジェンス活動はあったものの形骸化した部分もあったようです。

 

 特に冷戦期において、スパイを規制する法律もなく、ソ連のスパイが日本においてやり放題だったようで、「スパイ天国」と揶揄された時期もあったようで、西側陣営におけるインテリジェンス活動上の「穴」となっていたようで、アメリカの要請もあって次第に体制は整えていくモノの、あくまでも省庁単位でのインテリジェンス活動ということになり、省益に資する情報にしか関心がなかったということで、国家戦略に必要な情報収集という意味ではかなり抜け漏れが多かったようです。

 

 また、機密保護に関する法制も未整備だったことから、アメリカなど同盟国間であっても必要な情報の提供を躊躇されるようなこともあったということで、ようやく第二次安倍内閣において、インテリジェンス機関及び機密法制の整備に至ったということです。

 

 機密情報に関する法制ということで、安倍内閣の説明不足もありあらぬ方向の非難を浴びつつの成立だったモノの、こういった法制についての一定の必要性があったのは否めないところで、さらには対中ロ政策における必要上、ファイブアイズへの参画を求められているということもあり、より体系的なインテリジェンス活動に対する体制の整備が国策上求められるようになってきているワケですが、昨今の日本の体たらくを見ると、甚だ心許ないところです…(涙)

本棚には裏がある/酒井順子

 

 

 『負け犬の遠吠え』で知られる酒井順子さんが『週刊文春』誌の連載『私の読書日記』に寄稿された記事を集めた本です。

 

 寄稿された記事を、「女性」「暮らし」「歴史・社会」「旅」と大きく4つのジャンルに分けて掲載されていて、かつそれぞれの1回分の記事についても、1冊を取り上げて、というワケではなく、どういう基準のチョイスになっているのかよくわかりませんが、一定のテーマに従って何冊かをまとめて紹介されているので、あまりそれぞれについて深堀しているワケにはいかないのですが、ワタクシのように芋ずる式に関連する図書を知りたい向きにはありがたい構成です。

 

 酒井さんと言えば、個人的には「女性」モノと「旅」モノが印象的で、そういった本も取り上げられているのですが、意外と下ネタ系も題材にされることが多いのですが、この本ではオヤジ向けの雑誌ゆえか、AVに関する書籍や、グラビアアイドルの写真集なんかも取り上げられていて、結構キワドいないようにまで触れられているのですが、それなりにディープな内容であるにも関わらず、下品にならないところがスゴイところで、だからこそそういったチョイスを担当されているのかな!?と思わされます。

 

 また、1冊当たりに割ける紙幅が限られている中、あれこれ読んでみたいと思わせる文章力にもうならされます。

 

 結構、魅力的な本との出会いが期待できますので、是非手に取って見てください。

女たちのポリティックス/ブレイディみかこ

 

 

 『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』のヒットで名を馳せたブレイディみかこさんが各国の女性政治家を語った本です。

 

 元々、ブレイディみかこさんはBrExitを語った『労働者階級の反乱』や『そろそろ左派は<経済>を語ろう』など左派的なスタンスで政治を語られた著書も出版されていて、かなり政治的なトピックにも造詣が深いということで興味をそそられます。

 

 2018~2020年にかけて『小説幻冬』に寄稿されたモノを集められた本だということで、冒頭には自身は残留派であるにも関わらずBrExitEU離脱手続きを進める貧乏くじを引いたメイ首相の迷走ぶりを紹介されているのが印象的ですが、その他、ドイツの首相だったメルケルや古くはサッチャーなども取り上げられていますし、コロナ禍の対応において大きな成果を上げた女性の首脳についても取り上げられているのも興味深いところですし、そういう名だたる女性政治家と並べて日本の女性政治家も取り上げられてはいるのですが、世界から見てどうなのか心もとないところではあります。

 

 元々、男性社会だった正解に乗り込んだということで、女性政治家は相当な辛酸を舐めてきたことだと思いますが、ドイツ首相だったメルケルのように有力者から娘のようにかわいがられて引き立てられた挙句、上り詰めた途端手のひらを返して…みたいな人もいれば、サッチャーのように周りを引きずり降ろしてのし上がっている人もあり、様々なスタイルを紹介されています。

 

 ただ最近では、かなり様相も変わってきているようで、その美貌もあってかSNSなどを駆使してのし上がったニュージーランドのアーンダーン首相や市民運動など左派的な活動からのし上がる女性政治家もおられるなど、さまざまなスタイルが見られ始めているようです。

 

 また、極右政党に女性指導者が多いのも注目に値するところで、フランスのルペンなどが知られますが、日本の稲田朋美氏や三原じゅん子氏が同様の文脈で取り上げられているのが興味深いところで、フェミニズムなんかを考えると左派的なイメージがありますが、現実にそういう現象があるというのは興味深いところです。

 

 この本で一番興味深かったのが、コロナ禍においてニュージーランドのアーンダーン首相や台湾の蔡英文総統など女性の指導者の国が比較的対策に成功を収めた国が多いと言われていることについて、必ずしも首脳が女性だからということで成功したというワケではなく、女性の首脳を生み出すような「比較的、政府への支持と信頼があり、女性と男性の硬直した区別をしない政治文化」を持つ国が成功を収めているとするガーディアン紙に掲載されたニューヨーク大学社会学の享受の見解を紹介されていて、なかなかにナットク感が高いところではあります。

 

 次第に、各国で存在感を増している女性の政治家ですが、

 

 

 

 

 

日本史の裏側/河合敦

 

 

 久しぶりにNHK『歴史探偵』などでお見掛けする河合敦さんの著書です。

 

 河合センセイは『教科書に載せたい日本史、載らない日本史』など、あまり知られていない歴史のエピソードを紹介することが多いと思うのですが、この本もそういう趣旨のモノです。

 

 この本では冒頭の章で、昨年の大河ドラマ『どうする家康!』を受けて、徳川家康の知られざる事実を紹介したり、坂本龍馬ファンを自認する河合さんが、活躍を疑問視する論説を否定したりと、有名な歴史上の人物の裏話もあるのですが、石集めに生涯をかけた木内石亭など、余程の歴史好きでも知っている人は相当限られていると思われるマニアックなトピックを紹介されていたりと、あまりにニッチで読者がついてこれるのか不安になります…

 

 個人的には、おそらく河合センセイの専門である江戸時代のトピックで、知られざる科学技術の発展を紹介されているのが興味深く、西欧の技術に頼ることなく独自に天体望遠鏡や水道橋を開発したりと、驚くべき技術の発展があったことを紹介されており、明治維新が成功を収めたのは江戸期の科学技術の素地があったからだということを再認識させられます。

 

 また、江戸期は髪の毛の回収業者もいたなど、ほぼムダを見出せないリサイクル社会だったことを紹介されていることがオドロキで、現在をはるかに凌駕するSDGsを実現していたようです。

 

 あまりに意外なトピックが多く、特に歴史上の人物を中心に歴史を見ている人には、あまりにマイナーで投げ出してしまう人も少なからずおられると思いますが、個人的には歴史の息遣いがリアルに感じられるようで楽しめました。

専門家の大罪/池田清彦

 

 

 日本人ややたらと「専門家」をありがたがる傾向が強いのですが、歯に衣着せぬ論調で知られる生物学者池田清彦さんがその弊害について語られた本です。

 

 コロナ禍において「専門家」がやたらとクローズアップされて、国家の最高責任者であるはずの総理大臣を差し置いて、コロナ対策を「専門家」が語ることに違和感を感じた人は少なからずいたはずで、それなのに東京オリンピックの中止について語り始めた途端黙らされることにも違和感を感じたと思いますが、権力やメディアが自分たちに都合の良い「専門家」の意見だけをつまみ食いして「権威付け」をし、シロートたちを丸めこむのに利用していることを指摘されています。

 

 また、「専門家」自身も、自分の権威付けだったり、乏しい研究費をかき集めるために歪んだ論説を広めたりすることが多いということで、高血圧についての基準をジリジリと下げて、降圧剤を提供する製薬会社から研究費をせしめるなんてことも紹介されています。

 

 それもこれもやたらと「専門家」をありがたがり、その「ご宣託」を無批判に受け入れる我々一般人の態度に大きな問題があるワケで、例えばコロナ禍の政策決定の参考に、本来ならば公衆衛生学の「専門家」に諮るべきテーマを感染症の「専門家」に諮ったが故に、諸外国と比べて通常の社会生活への回帰が遅れ、不況に拍車をかけたという指摘があります。

 

 ということで、やたらと「専門家」の言うことを真に受けるのはかなり危険で、その論説の裏側にあるモノをキチンと考えておかないと、とんでもない目に遭いかねないことを思い出させてくれる本です。