満足できな女たち/田中亜紀子

 

満足できない女たち アラフォーは何を求めているのか (PHP新書)

満足できない女たち アラフォーは何を求めているのか (PHP新書)

 

 

 この本は2008年に出版された本で、サブタイトルにある「アラフォー」というコトバがテレビドラマのテーマに使われるなど、一般的に使われるようになった時期だったようです。

 その頃「アラフォー」だった世代の女性は社会人になる前後に男女雇用機会均等法が施行され、制度上は性別に基づく雇用の差別的な取り扱いが禁じられて、男性と伍してバリバリとキャリアを求めていく可能性が広がった世代だということです。

 ただ、受け皿としてはまだまだ整っていなくて、キャリアの道に進んだものの思ったような活躍ができなかったりという葛藤も少なからずあったようです。

 それでも段々環境も整って行き選択肢が広がっていく中で、男性や旧世代の女性から見ると、キャリアも結婚も出産も…という「欲張り」な世代に映ったようで言われのない非難を浴びることもあったようで、そういう過渡期の葛藤も紹介されます。

 この世代の人たちは大変だったとは思いますが、その苦労があったからこそ、未だ十分だとは言えないものの、その後の世代の女性の選択肢が広がっていった訳で、それが日本全体の「働き方改革」へのつながって行くのかもしれません。

 

御社の働き方改革、ここが間違ってます!/白河桃子

 

 

 「婚活」の白河さんが「働き方改革」を語ります。

 電通での若手社員の自殺を契機に安倍首相の肝いりで「働き方改革」が進められていますが、白河さんは政府の働き方改革会議の諮問委員を務められているということで、その中での議論も含めて「働き方改革」が待った無しの喫緊の国家的課題だということを強調されています。

 というのもデービッド・アトキンソンさんが著書で再三強調されているように、従来のように長時間労働人海戦術で成果を増やして行くことは最早不可能であり、如何にして生産性を上げていくかという意味でも、すべての企業が避けて通れない道のようです。

 ただ中高年層が長時間労働を美徳とする企業文化の中で成果を上げて来たが故に、未だに労働時間の長さを以って部下を評価しようとする傾向が強いようですが、経済のグローバル化に伴う国際競争の激化や人手不足によるリクルーティングの難しさなどから、何とか旧来の価値観から抜け出していく取組みをされてきた先進的な企業の実例を紹介されています。

 そういう必要性は最早個々の企業レベルを超えたものであり、日本が国際競争力を維持していくためにも、女性の活用を軸とした「働き方改革」は「勝つか、死か?(Win or Die?)という差し迫ったレベルの課題だということを日本全体で共有していかなければならないようです。

 

シニアひとり旅/下川裕治

 

 

 バックパッカーとして知られる下川さんがシニア世代にバックパッカー回帰を勧めた本で、アジア各国での“シニアのバックパッカー”なりの旅の在り方を紹介されます。

 若い頃だと、ただ目の前のことをフレッシュな感性で受け止めるという醍醐味がありますが、シニアだとそれまでの人生経験を通した見方をするということで、また新たな発見ができるんではないかということです。

 とは言っても“シニアのバックパッカー”たる下川さんが中国や韓国、ベトナム等を両行された様子を語られているに過ぎないという感じもしなくはないですし、バックパッカーの経験者ならともかく、どっぷりツアーでの旅行に浸かってきた人たちがいきなりそんなことをできるのか?などツッコミどころは満載なのですが、まあ、そういう世界もあるんだということを知るにはいいのかもしれません。


 

日本語と英語/片岡義男

 

日本語と英語 その違いを楽しむ (NHK出版新書)

日本語と英語 その違いを楽しむ (NHK出版新書)

 

 

 ワタクシが若い頃『スローなブギにしてくれ』など、著作が次々と映画化されて一世を風靡した片岡さんが日本語と英語のニュアンスの違いについて語られます。

 片岡さんがそういう本を書くこと自体が意外だったのですが、ご自身英語の映画や小説などで気になった英語のフレーズをカードに書き留めて、日本語だったらどういうだろうという“翻訳”を裏面に書いておく習慣があったそうです。

 そんな中でやっぱり英語特有で日本語にし難いフレーズというのが一定の割合であったようで、そういうモノを通して言語的な文化のギャップを興味深く紹介されています。

 よく知られているように日本語はあまり主語を明確にしようとしない言語であるのに対し、英語は一部の例外はあるモノの基本的に主語を明確にしようとする言語で、そういう“習慣”の違いから出るギャップがオモシロく感じられます。

 例えば"Who cares?"っていう表現、日本語だと「知ったことか!?」って感じになると思いますが、英語ではちゃんと"Who"という主語を明示して、Who≒Nobodyみたいな表現になっていますが、日本語だとそこをあいまいにしていることが示されています。

 文法や単語など英語の“お勉強”も大事なのは間違いないんですが、こういう“考え方”の差みたいなことを念頭に置いておくことが、知識の“深み”につながるんじゃないかと思うのですが…

 

和食の達人が伝授する目利きと技/野崎洋光

 

和食の達人が伝授する目利きと技 (角川SSC新書)

和食の達人が伝授する目利きと技 (角川SSC新書)

 

 

 レストランガイド『ミシュラン東京』で2つ星を獲得した日本料理の名店「分とく山」で総料理長を務められていて、時折メディアにも登場する野崎さんによるエッセイ風の著書です。

 モチロン板前として一人前になるには並々ならぬセンスと努力が必要なのは間違いないのですが、ちょっとしたプロの観点を取り入れることで家庭の料理をおいしくできるということです。

 特に和食の観点で、ということになるのですが、元々和食はできる限り素材そのものの味を活かすということで、味付けは流通の間に落ちた味を補うという最低限のモノを奨められています。

 また素材の“旬”を意識することで、比較的安価で高品質の素材を入手できることを強調されていて、和食の考え方というのは、かなりリーズナブルなモノであるようです。

 今の我々の食生活というのは、随分そういう“理想”から離れたモノになってしまっていますが、安価においしいものが食べれて、しかも健康にもいいということをもうちょっとちゃんと見直さないと…

 

5年後働く自分の姿が見えますか?/岩瀬大輔、飯村泰之他

 

 

 先日『新世代トップランナーの戦いかた 僕たちはこうして仕事を面白くする』という若手ビジネスパーソンに向けた労働観に関する本を紹介して、著名なビジネスパーソンのオムニバス形式ながらしっかり編集方針が行き届いていたことが印象的でしたが、結論から言うとこの本は真逆になっています。

 ライフネット生命の岩瀬さんや“侍ハードラー”為末さんと『新世代トップランナーの戦いかた 僕たちはこうして仕事を面白くする』と共通の執筆者もいらっしゃるのですが、冒頭に編集者である角川oneテーマ21編集部のまえがきで、特に執筆者間の意見調整は行ってません…的な後付けの言い訳から始まってますが、多分この本のタイトル通りのテーマとメインのターゲット読者だけ伝えて好きなように書いてくださいっていうことだったんでしょうね…

 個々の執筆者のおっしゃっていること自体は素晴らしい内容が多くて、特に若いビジネスパーソンにとっては示唆に満ちた内容なんですが、個人的には著名な、もしくはある程度の内容を保証できる執筆陣を集めました、さあ読んでください!ってそれだけでいいんですか?とどうしてもツッコミたくなる本でした…

 

日本人はもうセックスしなくなるのかもしれない/湯山玲子、二村ヒトシ

 

 

 本質をついた性愛論でしられるAV監督の二村さんが“スッキリ!!”のコメンテーターとしても知られる湯山さんと共に昨今のセックスを取り巻く状況について語られます。

 最近、草食男子とか言われて若いオトコのコがセックスに興味を持たなくなってきているといわれていますが…

 そもそもオトコにとってのセックスというのは支配欲を満たすという側面もあったということで、セックスをすることでオンナを支配したと思えるところも快感の一要素なんだそうで、昨今自信が無くなった最近の若いオトコのコたちは、オープンで強くなったオンナのコを支配しようだなんて…

 それに対して、ただ男性に合わせるだけだったオンナのコたちは、二村さんの言う“心の穴”を埋めるという意味だけではなく、セックスそのものにも積極的になり、また世間の雰囲気にもそういうオープンな姿勢に寛大になり、女性誌のセックス特集がバカ売れするという事態につながっているようです。

 まあ、そういうミスマッチがどうなっていくといった考察にまではつながって行っていないのですが、昔よりずっとコトはフクザツになっているようで…でも、あんまりアタマを介在させない方が楽しめるんじゃないかと思うんですけどねぇ…