これからの「正義」の話をしよう/マイケル・サンデル

 

これからの「正義」の話をしよう (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

これからの「正義」の話をしよう (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

 

 

 非常に話題になった本ですね。

 「正義」についての話なのですが、「正義」というのが如何に相対的なものなのか、ということについての話が400ページ余りにわたって続きます。

 まず、一方の方法をとると5人が犠牲になってしまうのに対し、もう一方の方法をとれば1人犠牲になる…その時に後者の方法を取ることが「正義」なのか?

 そのお話に始まって、積極的にマイノリティの支援を行うこと、国家が過去の行為の謝罪や賠償をすること、一見、倫理的に問題のありそうなことについての行為をすることの自由を確保することなどなど、我々の道徳的な観点で言うと到底許容しがたいことであったとしても、ある観点から見れば、論理的な合理性があり、かつ社会的な意義もあったりするわけです。

 しかも、その「道徳的」であることが、いつの時代でも、世界中のどこにおいても通用する普遍的なものかと言えば、大体の場合は、ある時代の特定の地域にしか通用しないことも多いんじゃないかということもあります。

 だったらどの手段をとればいいのか…と途方に暮れてしまいかねない部分もあるのですが、道徳的な部分だけを見て、後の側面を無視して判断をするのではなく、ちゃんと観点からの考慮をした上で判断することが必要なのではないか…ということを留意しておかないといけないようです。

 

欧州サッカー名将の戦術事典/清水英斗

 

欧州サッカー 名将の戦術事典

欧州サッカー 名将の戦術事典

 

 

 新進気鋭のサッカーライター清水さんの監督論です。

 現在活躍中の監督を中心に40人の名将たちを取り上げているのですが、それを名将、智将、個性派、新進気鋭と4つに分けられているのですが、名将の条件がW杯、CL、ユーロの優勝ということなのですが、ミランでCLを制しているカペッロが名将の中に入れられていないのが、著者の好みを顕著に反映してて笑えます。

 それぞれの監督に4ページを割り当てて、1ページ目が写真、2ページ目が略歴、3,4ページ目に主だった2チームでのメインとバリエーションとしてのフォーメーションを紹介されています。

 2年くらい前にサッカー専門誌の購読を止めてから、ちょっとヨーロッパの先端的な戦術について疎くなってきているのですが、随分のバリエーションが豊かになっているなぁ…と驚きました。

 ひと頃、プレーヤーのアスリート的な能力ばかりに頼るような戦術が幅を利かせていたのが、また楽しくなってきてますねぇ!!

 

一流の人に学ぶ自分の磨き方/スティーブ・シーボルト

 

一流の人に学ぶ 自分の磨き方

一流の人に学ぶ 自分の磨き方

 

 

 この本も『年収を上げる読書術』の推薦図書です。

 この本の著者は元々プロテニスプレイヤーだったとのことですが、一流の人と二流の人に大きな能力の差があるのかというと、多くの場合、そういうワケではないとおっしゃいます。

 むしろ能力の差は紙一重で、ココロの持ちようひとつで、一流の人の行動をマネれば、大概の人は一流になれるということなんだそうですが、多くの人はそれをやらない、ということです。

 何故かというと、一流の人は自分のことについて「肯定」から入るのに大して、二流の人は「否定」から入ってしまうので、どうせムリだ、と思ってしまうからなんだそうです。

 この差が、何事においても「一流」と「二流」を分ける大きな要因みたいです。

 この本の原題は“177 Mental Toughness Secrets of the World Class”ということで、いかに自分を信じぬけるか、それが「一流」であるための「唯一の条件」のようです。

 

 

モチベーション3.0/ダニエル・ピンク

 

 

 お約束通りの著者ループモードですが、ダニエル・ピンクさんは、あまり著書が多くないこともあって、とりあえずここで打ち止めとなります。

 この本は数年前に相当話題になっていたんで気になってはいたのですが、ダニエルさんの著者ループモードの勢いで手に取ってみました。

 モチベーション論をカジッたことのある人にとっては、そんなに目新しい話ではないのですが、ダニエル・ピンクさんって、ある分野のことを多少詳しく知っている人にとっては、どーってないことを一般的にするのが得意なようです。

 で、モチベーション“3.0”ということなんですが、PCノのOSのリビジョンに引っ掛けた表現なんだと思いますが、ちなみに、

  1.0:欲望のままに行動する状態
  2.0:“報酬”によってモチベーションを喚起すること

ということで、従来の会社社会では長年この“2.0”によるモチベーション喚起が行われてきました。

 ただ、それは反復的な仕事には有効でしたが、『フリーエージェント社会の到来 新装版---組織に雇われない新しい働き方』にもあったように、クリエイティブな仕事を行う上では、インセンティブによるモチベーション喚起は、むしろ真逆に作用してしまうことが多いようです。

 そんな中で“3.0”なんですが、その仕事の対象そのものを磨き上げていくというか、仕上げることそのものにモチベーションを見出そうとするということで、芸術家やスポーツ選手のように、仕事そのものを向上させていくことに喜びを見出すことを指摘されています。

 まあ、多くの会社勤めの人にとっては難しいんでしょうけど、ダニエルさんが勧めるフリーエージェントとかとセットにして考えるべきなんでしょうね…

 

フリーエージェント社会の到来/ダニエル・ピンク

 

フリーエージェント社会の到来 新装版---組織に雇われない新しい働き方

フリーエージェント社会の到来 新装版---組織に雇われない新しい働き方

 

 

 予告通り、ダニエル・ピンクさんの著者ループモードに入りつつあります。

 この本はデビュー作なんだそうで、2001年に出版されたものが、新装版として2014年に再出版されたようです。

 さすがに2001年当時では進み過ぎた考え方だったんじゃないかな、と思えるのですが、今となってはかなり「あたり前」の概念とも言えます。

 個人としては、好きな時に、好きなだけ、好きなところで、好きな相手と仕事をするということで、かなり魅力的な響きなのですが、いろんなシガラミで、なかなか実行に移すわけに行かないというのが多くの人にとって正直なところだと思います。

 ただ、2001年当時のアメリカにおいては、徐々にフリーエージェントが活躍するための環境が整いつつあったようで、スタバがそういう人たちを呼び込むためにインテリアを改装したり、WiFiを設置したりしていたのと、フリーエージェントと顧客になる人のマッチングといったサービスが立ち上がって行っていたようです。

 さらには、かつて勤務した企業単位でOB/OGのネットワークが形成されて、そのまま仕事をする上での人脈形成にもなったようです。

 この本でピンクさんは、雇用されなくなることで医療保険が無くなることを気にされていますが、それもオバマ大統領の国民皆保険の導入で解決したはずです。

 最早、クリエイティブな仕事をするのに、旧来の会社組織がそれにふさわしい形態を未だ提示できていない現状において、国際競争上、日本もこういう動きを積極的に支援していかないと、立ち遅れてしまうことになりかねないですね。

 

ハイ・コンセプト/ダニエル・ピンク

 

ハイ・コンセプト「新しいこと」を考え出す人の時代

ハイ・コンセプト「新しいこと」を考え出す人の時代

 

 

 先日紹介した『年収を上げる読書術』の推薦図書一覧を“The 自己啓発書“みたいな感じで紹介しましたが、結構未読の本があったので手に取ってみました。

 結構、ダニエル・ピンクさんの本を多く紹介されていて、ワタクシは未読の本が多かったので、今後ちょっと紹介が続くかも知れません。

 インターネットの普及で、ビジネスパーソンに求めらえる資質が大きく変化しつつある、というのはよく言われていますが、2006年出版のこの本の“予言”が着々と的中しつつあるんだなぁ…ということに驚きます。

 まず、ただ単に“知って”いることだけにはまったく価値がなくて、そういうことに依存している職業は真っ先に淘汰されるということです。

 またグローバル市場の進展から、海外で安く調達できるもの、そしてコンピュータ化の進展から、反復性のある仕事については、早晩置き換えが進むということです。

 だから、常に何か新たな「価値」を生み出すことができないと、生き残っていけないということで、従来の「左脳」的な仕事から、「右脳」的な仕事のやり方にシフトしていくべきだということで、そのための「心得」を紹介されています。

 かなり大きなパラダイムシフトですが、ワタクシはこのままあと10数年をやり過ごせるか、飲み込まれてしまうのか…

 

サッカーと愛国/清義明

 

サッカーと愛国

サッカーと愛国

 

 

 「愛国」とありますが、どっちかというとネガティブな意味での「ナショナリズム」の裏返しとしての「レイシズム」が大きなテーマになっているような気がします。

 まずは、韓国の蚕室スタジアムで旭日旗を掲示した「事件」とロンドンオリンピック男子サッカーの韓国vs日本の3位決定戦後、竹島問題に関するプラカードを選手が掲げた件について取り上げられます。

 決してどちらもバリバリのナショナリストの所業だった訳ではなく、片や目立ちたがり屋の暴走だったり、片や偶発的な側面の否めないものだったりします。

 とはいえ、そういうホンのちょっとした(と思える)ことをキッカケに長期の紛争にまで発展したこともあり、サッカー界ではこういったナショナリズムを非常に警戒しています。

 ただでさえナショナルチーム同士の対戦では、そういうナショナリズムに「点火」されやすい状況でもあるので、パッと見、極端なまでの抑止が必要なんだと思えます。

 さらにレイシズムですが、これはナショナリズムのダークサイドの1つだと思うのですが、イングランドのフーリガニズムも、レイシズムが重要な論点だったということであり、サッカーにおける暴力と直結する要素があるということと、人間としてやっちゃいけない、ということもあり、徹底した対応が必要なようです。

 そういう意味で、埼玉スタジアムで掲示された“Japanese Only”という横断幕に対して、断固たる対応をとったクラブおよびJリーグの対応は評価すべきことだと思います。

 純粋にサッカーというスポーツを楽しむためにも、今後とも断固たる抑止力を、我々ファンの間でも発揮しないといけないようです。