もたない男/中崎タツヤ

 

もたない男 (新潮文庫)

もたない男 (新潮文庫)

 

 

 ワタクシが大学生だった頃、『じみへん』というシュールなマンガがあって、最初は「なんじゃこりゃ!?」という感じだったのですが、段々とハマって行ったのを覚えていますが、その作者がこの本の作者の中崎さんです。

 最近は、ミニマリストと言う、できる限り「持たない」ようにしようとするライフスタイルを志向する人が出現してきているようですが、中崎さんは、ある意味そのハシリだったのかも知れません。

 ただ、別にオシャレなライフスタイルがどうこういうワケではなく、ただ余計なモノを持っているのがストレスになるということのようで、それなのに物欲は旺盛で、何かと欲しくなって買っては見るモノの、ジャマになって捨ててしまうということです。

 まあ、ビミョーにコミカルなところもありますが、モノがないというのも楽しそうだな、と思させてくれます。

 

 

新・オタク経済/原田曜平

 

新・オタク経済 3兆円市場の地殻大変動 (朝日新書)

新・オタク経済 3兆円市場の地殻大変動 (朝日新書)

 

 

 「マイルドヤンキー」の原田さんがオタクを語ります。

 原田さんによると「マイルドヤンキー」じゃないですが、オタクも「マイルド」化してきており、オタクと聞いて多くの人が思い浮かべるような、映画『電車男』の主役のような「ガチオタ」は、最早絶滅危惧種に近いようです。

 かつてのオタクは同好の人に対しては社交性が乏しかった(今だったら、コミュ障って言うんですかね…)のに対し、最近のオタクは、オタクであることがコミュニケーションのネタに使えるとして、積極的にカミングアウトし、プライベートも充実してるということで、この本の中では、こういうタイプのオタクを「リア充オタク」と呼んでいます。

 ただ、かつてのオタクは購買意欲がハンパなかったのに対し、「リア充オタク」はあくまでもツールとしての位置づけなので、グッズなどに対する消費意欲は低く、オタク市場は縮小傾向にあるようです。

 ただ、市場がこういった「オタク」層のシフトに、現時点ではついていけていないだけで、そういうセグメントにアピールするための商品・サービスの提案もされています。

 個人的には、アニメやアイドルといったオタクは苦手なのですが、日本経済を牽引する起爆剤としてガンバってもらいたいと思う反面、アニメやオタクが日本を代表する文化だとされるのはなぁ…

 

本物の思考力/出口治明

 

本物の思考力 (小学館新書)

本物の思考力 (小学館新書)

 

 

 これまでの著書でも出口さんは、戦後日本経済を支えてきた、アメリカへのキャッチアップ型の成長モデルは最早機能しなくなっており、個々で思考力を身に付けて行かないと生き残っていけないということを再三おっしゃっていましたが、この本はその“思考力”を身に付けるための取組に特化した本です。

 これも既出の図書に書かれていましたが、モノを考える際には「数字・ファクト・ロジック」に基づいて考えるということなんですが、この本で強調されているのは「腹に落ちるまで考え抜く」クセをつけるということです。

 この本に書かれていることで一番印象的だったのは、そうやって思考力を研ぎ澄ましていって、十分なインプットをしていれば、直感的に行動しても、あまり外れたことにならなくなるということで、日本人にとって、間違うことよりもトライアル&エラーをしないことのリスクが大きいということを痛感させられる内容でした。

 

ダブルマリッジ/橘玲

 

ダブルマリッジ The Double Marriage

ダブルマリッジ The Double Marriage

 

 

 久々に橘さんの小説なんですが、法のスキマから戸籍上重婚になってしまうという実際に起こりうるレアな事例から着想を得たモノだということです。

 若き日にフィリピンに赴任して現地の女性と恋に落ち、結婚に至った男性がそれを問題視した会社がその人を呼び戻し、日本で別の女性と結婚してフツーの生活を送っていたところ、ふとしたキッカケで戸籍を取ったところ、かつてのフィリピンの女性との結婚が日本の戸籍に掲載されていたことを発見したことから始まるストーリーを描かれます。

 ひと頃、日本人男性がフィリピンに「買春ツアー」に行っていた時期もあって、取り残された日本人男性の子供が数十万人もいた時期があって大きな社会問題となったということで、そういうことへの問題提起もあって提起されたモノだと思うのですが、戦時中の韓国人女性を犠牲にした慰安婦問題にもあるように、経済力や戦力などチカラある国の男性が、一時の性欲を満たすために弱者の国の女性を始めとする人たちを不幸な境遇に追いやったという事態が少なからず発生したということは否定しがたいことだと思います。

 ワタクシ自身も、ひと頃何度か海外出張をした際に、周囲にハメを外して性的なサービスを利用する人が周囲に少なからずいました。

 まあ、慰安婦と出張者の遊びを同列に語ることは難しいとは思いますし、ことさらにキレイごとを言うつもりは、ワタクシ自身も長期の海外駐在と言う立場に置かれたら、絶対に拒否したとは言い切れない自分がいる以上、毛頭ないワケですが、早晩、こういう人の尊厳を無視してまで、性欲を満たさないといけないのか?ということについては、よくよく考える必要があるんじゃないか?そういうところにグローバルな場で仕事をする資格の一つがあるんじゃないか…などとこの本を読んで、色々と考えさせられました。

 

格付けし合う女たち/白河桃子

 

(010)格付けしあう女たち (ポプラ新書)
 

 

 「婚活」の白河さんが、主婦たちのマウンティングに迫ります。

 先ごろ、タワーマンションに住む主婦のマウンティングを主なテーマとしたドラマが話題になりましたが、ママ友や、クラス、職場などで、目の前の人よりも優位に立とうとする女性たちの姿が描かれます。

 なぜそういうことが起こるかと言うと、白河さんは、

  ・ヒマな集団
  ・狭くてぬるい均質な集団
  ・逃げられない集団

で起こるということで、ママ友なんかは格好の例であるワケですが、特に「ヒマ」ということを強調されています。

 白河さんは、これも近い将来に無くなると予言されているのですが、要するに白河さんが再三おっしゃっている、専業主婦が消えてしまうことで、こういうヒマなことをする人はいなくなるということで、ムリヤリ自分のフィールドに引き戻して終わりました、と言う感じです。

 

不倫女子のリアル/沢木文

 

不倫女子のリアル (小学館新書)

不倫女子のリアル (小学館新書)

 

 昨日に引き続き、沢木さんによる現代を生きる女性の「リアル」です。

 昨年は「ゲス不倫」が頻繁に取りざたされましたが、Facebookを筆頭にSNSの普及で、かなりフツーの主婦にとっても不倫のハードルが下がるということもあり、この本で取り上げられる女性たちに、不倫と言うコトバの従来のイメージが持つ暗さはありません。

 「稼ぐ女」だったり「キレイな女」だったり、どちらかというとフツーよりもアドバンテージがある女性たちが取り上げられています。

 この方々、いろんな意味で貪欲であり、その中に性的なモノも含まれるということなのですが、そういう風潮の背景には、不倫がバレたからと言って、それが離婚に直結するわけでもなく、離婚したからと言って、経済的に困るという人が減っていて、寧ろ男性の方が婚姻状態に固執する傾向すらあるようです。

 まあ、昨今の女性の方々のタクマシさには、驚くばかりです。

 

 

貧困女子のリアル/沢木文

 

貧困女子のリアル (小学館新書)

貧困女子のリアル (小学館新書)

 

 

 最近、貧困にあえぐ女性がメディアで取り沙汰されることが多いんですが、結構意外なタイプの人が貧困に苛まれていることを取り上げられます。

 貧困にあえぐ女性と言うと、元々貧困な家に生まれたとか、シングルマザーとかを思い浮かべますが、この本で取り上げられている「貧困女子」は大学・短大卒の方々で、一部はフツーに正社員で働いていて、それなりの定収もあるにも関わらず貧困にあえいでいるパラドックスに陥る過程を紹介されています。

 こういう貧困に陥る女性と言うのは、容姿に関するコンプレックスや、主に母親との関係などの親子関係の歪みだったりといったことを引き金に、浪費だったり、安定した収入源を捨て去ったりということを契機にしていることが多いようです。

 ある意味これは精神疾患と言うか、何か満たされないモノを埋める何かという側面もあるようで、現代的な社会環境がもたらしたモノだと言えるのかもしれません…