勝者のシステム/平尾誠二

 日本代表監督もされた平尾さんが、神戸製鋼に入社してから7連覇を果たすまで…
実質的には、V3時に三洋電機をロスタイムに大逆転したあの勝利までのプロセスを
語った本です。

 ラグビーというのは、他の競技にも増して体育会的体質が強い、と平尾さんはおっ
しゃいますが、またそのことがラグビーの強化を妨げているともおっしゃいます。

 平尾さんは、伏見工業、同志社大学と、比較的体育会的体質の薄いところで育って
来ているのですが、それでも大学卒業後、イングランドのクラブチームでの経験が
その後のキャリアの重大なターニングポイントとなっているようです。

 体育会的体質では、「我慢」が重要な要素となっているのですが、そのことが
ラグビーにとって重要なイマジネーションの発揮を妨げているといいます。

 また、平尾さんは、監督を置かない神戸製鋼に進んだからこそ、その後のキャリア
があったんだと、この本を読んで痛切に感じます。

 選手時代から、かなり監督に近い視線を持って取り組めたのも、神戸製鋼だったから
なんだな、と思います。

 でも、その後のラグビー界の推移を見ていると、日本代表でも神戸製鋼でさえも、
平尾さんのリベラルな考え方を受け継げていないんじゃないか、と思えて仕方ありません。