友だちがいないと不安だ症候群につける薬/齋藤孝

 

友だちいないと不安だ症候群に効く授業。 (朝日文庫)

友だちいないと不安だ症候群に効く授業。 (朝日文庫)

 

 

 最近は、テレビのコメンテーターとしてもおなじみの斎藤先生の著書です。

 携帯が普及して以降、友達関係が変容していると言われていますが、最近では、携帯を介して常に“つながっている”感が無いと不安だという人が少なからずいるようです。

 この本は、中学生に向けて齋藤先生ご自身が行った「友だちとのつながり」に関する授業がベースになっているということなのですが、できるだけ早めに「友だち力」をつけることが、学校における様々な問題を回避することにつながるということです。

 「友だち力」と言うのは、自分が関わる人たちと適切な距離感を保てる能力だということで定義されています。

 「適切な距離感」を取ることが重要なのはなぜなのか、ということなのですが、「友だち」とは言いながら、いいように“パシリ”にされていたり、時には暴力を受けていたりしながらも、ただ単に「つながり」がなくなることが怖くて従っているということもあるようですが、そんな状況がエスカレートすると、いじめにつながったり、いじめに基づく自殺や行きずりの殺人にもつながりかねないということです。

 そういう時は勇気をもって「一人になる」ということを選ぶのも、ある意味「友だち力」の一環だともおっしゃいます。

 後半では、鹿川君事件を題材にした「いじめ」に関する授業についても取り上げられていますが、子供たちに如何にして「いじめ」がいけないことなのか、ということを皮膚レベルで実感してもらえるか、ということについてのかなり有効なヒントを提示されていると思いました。

 いじめる側になる潜在性や逆にいじめられる側の潜在性を含めて、中学生前後の子どもを持つ親御さん、もし読書の習慣があるならば中学生前後の年代の人に、是非とも一読してもらいたい本です。