テニスプロはつらいよ/井山夏生

 

テニスプロはつらいよ 世界を飛び、超格差社会を闘う (光文社新書)

テニスプロはつらいよ 世界を飛び、超格差社会を闘う (光文社新書)

 

 

 近年は錦織圭選手の活躍で話題の多い男子プロテニス界ですが、下部ツアーで苦闘する中堅プレイヤーの状況を通して、男子プロテニス界の過酷な現状を紹介した本です。

 取り上げられている関口周一選手は、錦織選手の2歳年下でジュニア時代には世界ナンバー5となり将来を嘱望された選手だったのですが、プロ転向後は世界ランク250位前後まで上がったことはあったものの、世界の注目を集めるグランドスラム大会の出場経験はなく、下部ツアーを転戦し続けている選手です。

 他のスポーツと比較してテニス界と言うのは、トッププロには莫大な報酬をもたらすものの、その恩恵をうけるのはホンの一握りで、ツアーの賞金だけで生活できるのは、グランドスラム大会にストレートイン(予選を経ることなく参戦できる)が可能な100位以内と言われており、それ以下の選手はスポンサーの支援がなければ生活が覚束ないということです。

 そんな中で限られた資金の中で一つでも多くの大会に出場して、1ポイントでも多く獲得し、少しでもランキングを上げようとする姿が紹介されます。

 ワタクシ自身テニスにハマっていた(見る方もプレイする方も…)時期があって、松岡修造氏が引退する直前だったのですが、その当時若手だった鈴木貴男選手や本村剛選手が下部ツアーで戦うのを応援していた頃のことを、この本を読んでて思い出しましたが、そう考えると錦織選手が如何に“例外”だったかということを痛感させられます。