なぜ少数派に政治が動かされるのか?/平智之

 

 

 タレントやDJなどの活動を経て2009年に当時の民主党から立候補して衆議院議員となり1期だけ国会議員を務められた筆者が、日本における”民主主義”の欺瞞を語られた本です。

 

 この本が出版されたのが2013年で、この本の中で語られている内容は民主党政権時代のことが多いので、この本の主題である「少数派」による支配は、今振り返ってみると自民党に政権が戻って安倍政権の長期化によって、より酷くなっているように見えます。

 

 原発廃止や保育所拡充、租税負担の軽減など、日本国民の多くがそちらを望むに違いないと思える政策が、多数の支持によって政権を成り立たせるはずの与党によって取り入れられないというのは、よく考えてみれば不思議なことですが、この国では一般的な投票者よりも、既得権益を持つ少数派の方が与党に対する影響力が強いらしく、より少数派の利益に利する方向に向いていってしまう傾向が強いようです。

 

 その原因として多くの日本国民がネガティブ・サイレント・マジョリティという積極的に自身の意見を投票活動に結び付けることがないことだと指摘されています。

 

 最近でこそSNSであからさまな偏向に対して反対を表明する人が増えているものの、あまり肝心の投票行動には結びついていないようで、やはり既得権益を持つ少数派はそのまま、自分たちに都合のいい政策を実現してくれる官僚や政治家と(最近は大手マスメディアもその一味と言えるかも知れません…)強固な政策実現のためのシステムを維持したままです。

 

 安倍~菅政権でそういう歪みは覆い難いモノになってしまっており、それまで政権を支えていた、なんとなく安定しているように見える経済もコロナ禍でフッ飛んでしまい、次の国政選挙で日本国民はネガティブ・サイレント・マジョリティではなくなるのでしょうか…