イスラム世界研究者の方が語られるガザ紛争の状況についての本です。
日本にいるとどうしてもアメリカの意向を強く反映した報道が多いため、ガザでの状況については、最初にハマスがイスラエルに攻撃をしたこともあって、上川外相がハマスに対する非難声明を発したように、イスラエル寄りの内容の報道が多いように思えますが、イスラム世界研究者の語る状況だけに、パレスチナに同情的な色彩は強いと思われるものの、ちょっと日本での報道は違うんじゃないの!?と思っている向きかれすれば、結構ナットク感が多いモノだと思われます。
そもそもハマスの侵攻自体も、それまでのガザ地域におけるイスラエルからの圧迫や経済封鎖に耐えかねてという側面が多々あるということで、しかもその後の「やり過ぎ感」はおそらく数少ない後ろ盾であるアメリカも持て余しているようなところも見受けられるなど、非道振りが目を覆う状況になっており、アメリカでもリベラルな学生などを中心にイスラエルへの非難が高まっています。
そういった状況について、イスラエルがなぜそこまで強行的な姿勢に終始するのかについて、歴史的な背景も踏まえて解説されていて、元々「約束の地」を追われたユダヤ民族の「夢」としてのイスラエル建国という側面はあるモノの、ナチスによるユダヤ民族迫害を始めとするヨーロッパにおけるユダヤ人の迫害や、イギリスの「二枚舌外交」への反発など、同情すべき状況は多々あるモノの、それにしてもイスラエル建国宣言では、一定のアラブ諸国との融和を謳っていたのとは相反して、シオニズムに基づくイスラエルの姿勢は過激さを増すばかりで、ラビン首相のようにアラブ世界に融和的な首脳が一時期出現しても暗殺されてしまうなど、アラブ世界に対しては極端な強硬姿勢しか受け入れられないように見受けられます。
ただ、ユダヤ人全般がそういう考え方にあるわけではないようで、極端にアラブ世界に敵対姿勢を示すシオニズムに懸念を占める向きはあるのはあるようですが、イスラエルにおいてはなかなか大勢を占めるに至らず、国際世論もイスラエル非難の姿勢は見せるモノの、ナチスを始めとするユダヤ人迫害の歴史に後ろめたさを覚えるところもあるのか、なかなかイスラエルを追い詰めるところまでの非難ができないところにあるようです。
日本としてはあまり利害関係がない中で、アメリカに追従してイスラエルを支持するというのは、あまりホメられた姿勢とは思えず、せめてこういうところではアメリカの意向を過度に忖度するのは避けてほしいモノですが…