フィンテック革命の衝撃/藤田勉

 

 

 フィンテックってホントに既存のおカネの動きを根底から覆すようなポテンシャルがあるのに、どうも日本ではそれに見合った注目度じゃないなぁ、ということで手に取ってみました。

 特にビットコインを始めとする仮想通貨が大きな影響を及ぼすと思うのです、それ以外にもAIを駆使した投資アドバイスの自動化とか、決済機能のスマホでのワンストップ化など銀行のビジネスモデルを根底から揺るがしかねないような仕組みがホンの目の前の所までやってきているようです。

 さらにビットコインでは、悪意ある攻撃への耐性を強化した取引プラットフォームの開発や、相場の変動の影響を最低限にするスキームの導入など“通貨”としての利用をスムーズにするための環境が格段に整ってきているようです。

 ただそんな中でも日本は、特にアメリカと比べてフィンテックの環境整備が遅れているようで、ソニーFelicaなど優れた決済プラットフォームを持ちながらも、ガラパゴス化への危機を乗り越えられるかどうかの瀬戸際にあり、一発逆転に向けた奮起が望まれるところです。

 突き詰めると国家による通貨の発行と言った、これまでの“常識”が消えてしまいかねない動きを注視していく必要がありそうです。


 

旅行者の朝食/米原万里

 

旅行者の朝食 (文春文庫)

旅行者の朝食 (文春文庫)

 

 

 ロシア語通訳にしてエッセイストの米原さんの“食”をテーマにしたエッセイを集めた本です。

 米原さんご自身かなり食には関心が強かったみたいで、かつ海外での豊富な経験を通した“食”が描かれていて何かと興味深いのですが、その中でも何度か、日本の“食”への郷愁みたいなことをテーマにされたエッセイを書かれていて、あれだけ海外での経験の豊富な方でもそうなんだ、と思うとちょっとホッとするところがあります。

 

常識の超え方/池田純

 

 

 2011~2016年に渡りDeNAベイスターズの球団社長を勤められて、球団の収益を大幅に改善すると共に、万年最下位の球団を球団史上初のCS進出への道筋をつけた池田さんの著書です。

 DeNAベイスターズを買収して池田さんが球団社長に就任した当初、球団経営に関する何らかの“教科書”的な書籍があるんじゃないかということで、色々と探されたようなのですが、そういうものは存在せず、球団社長を退くにあたって、池田さんが就任当初に求められていた“球団経営の教科書”を意図して書かれたということです。

 従来、球団経営というと親会社のPRのためにあるもので、赤字を垂れ流しても親会社が穴埋めすればいいや、というモノで、文字通りドンぶり勘定だったのですが、池田さんはマーケティングなどの企業経営のセオリーを球団経営に適用して、球団単独での経営を成立させたということで、大きな功績と言えます。

 更に池田さんは“スポーツビジネス”の定着を強く意図されており、スポーツが既存の企業の支援から脱却して独立したカタチで経営が成り立つようにすることで、より豊かなスポーツ文化が根付くのではないかということで、Numberが主催されているセミナーなどでも啓蒙活動を継続されており、その活動の成果が実り豊かなものになることを祈って止みません。

 

活中論/近藤大介

 

活中論 巨大化&混迷化の中国と日本のチャンス

活中論 巨大化&混迷化の中国と日本のチャンス

 

 

 最近中国関連の本と言うと、ディスる方向のモノが多いのですが“活中”ということで「親中」でも「嫌中」でもなくということで手に取ってみたのですが…

 オバマ政権の頃からそういう雰囲気があったのですが、トランプ政権になってアメリカが“世界の警察官”の役割を放棄して、国内の充実の方向に向いて、最早日本もアメリカの傘の下でのうのうとしているワケにはいかない…だからといって自前で中国と対抗するワケにも行かない、だったらうまく中国を使おうよ!ということらしいです。

 正直、そういう論理が70ページ位で終わって、その後は習近平が如何に権力基盤を堅固にしているかということを延々と語られていて、なんだかなぁ…という感じです。

 でも、最近はちょっと揺り戻しが来ているようですが、ひと頃日本企業の中国離れが取り沙汰されていましたが、ちょっと中国経済が停滞しているからといって、今中国ビジネスから撤退してしまうのは極めてモッタイナイ!というところに関しては強くナットクです。

 というのも、消費のオイシサを知った中国人が多くなり、しかも日本の商品への志向が強いということで、うまく付き合っていくことがベターなのは間違いないですよね!?

 

楽しく学べる「知財」入門/稲穂健市

 

楽しく学べる「知財」入門 (講談社現代新書)

楽しく学べる「知財」入門 (講談社現代新書)

 

 

 知財っていうとワタクシが昔、中小企業診断士試験を受けていた頃に、経営法務って科目に含まれていて苦労した記憶があります。

 ということで、ごく基本的な知識はあった上でこの本を手に取ったワケですが「楽しく学べる」ということですので、教科書的に知財の内容を辿るというよりも、知財にまつわるトピックを紹介することで、知財への親近感を高めると言ったことが目的になっている本のように感じます。

 以前問題になった東京五輪のエンブレムの摸倣問題における著作権法上の問題を語るとか、一時期問題になった有名ブランドのパロディ商品の商標権上の問題などの親しみのあるトピックを通して知財の実務的な扱いを学べるといった感じで、今まであまり知財に縁の無かった人が、なんとなく雰囲気をつかむと言った意味でも意義があると思いますし、ごく基本的な知識のある人が実務上の取り扱いを学ぶという意味でも大きな意義があるんじゃないかと思います。

 

はじめての宗教論 右巻/佐藤優

 

はじめての宗教論 右巻 見えない世界の逆襲 (生活人新書)

はじめての宗教論 右巻 見えない世界の逆襲 (生活人新書)

 

 

 ということで昨日に引き続き、宗教の基本的な概念を紹介されているという右巻の方を引き続き紹介します。

 基本的な概念といいつつ、カンタンな内容だとというワケでないのは左巻同様です。

 そもそも宗教ってどういうモノだ、ということについて佐藤さんは「見える世界」と「見えない世界」を繋ぐものと定義されています。

 宗教の役割みたいなところも興味深いのですが、佐藤さんが再三、グローバルについて理解するには宗教、特にキリスト教について理解することが不可欠だということをおっしゃられていましたが、この本の中でキリスト教的なモノの考え方と、日本人の発想のベースとなる考え方の違いをいろいろと取り上げられています。

 確かにこれはちゃんと意識をしていないと根っこのところで理解できない事態が発生しかねない違いがあって、参考になります。

 もうちょっとツッコんでこの分野の本に当たっていかないとなぁ、って感じです。

 

 

はじめての宗教論 左巻/佐藤優

 

はじめての宗教論 左巻 ナショナリズムと神学 (NHK出版新書)

はじめての宗教論 左巻 ナショナリズムと神学 (NHK出版新書)

 

 

 「知の怪人」佐藤さんによる初歩の宗教論ということで手に取ってみたのですが、右巻、左巻どっちが先?って…右の方が先だったみたいです…

 「はじめての」とありますが、必ずしも平易な内容というワケではなく、正直かなり難解です…と言うか、哲学の主要な説などかなりの前提知識を必要とするのかなという気がします。

 宗教の基本的な概念を紹介したという右巻から読んだ方が分かりやすかったのかもしれませんが、副題に『ナショナリズムと神学』とあるのですが、そればかりに終始するワケではなく、宗教の“機能”みたいなことを紹介されます。

 宗教と言うと日本人は倫理や道徳と言ったことを思い浮かべがちですし、宗教がそういう側面を持っていることは間違いないと思うのですが、必ずしもすべての宗教が倫理的だったり道徳的だったりするワケではなさそうです。

 突き詰めて言えば、宗教と言うのは個人の内心の問題であり、信条を形成するためのサポートだったり、バックグラウンドになったりすることが根源的な機能のようで、そういうところにツケ込んで宗教を“悪用”しようとする為政者もいたりするワケで、その一つとしてナショナリズムと結びつけることがあるようです。

 あとは、この本の主題という訳ではないのですが、この本に書かれていることで一番印象的だったのが、長く資格試験のための勉強をしているとアタマが悪くなる、とおっしゃっていることです。

 要するに、決まりきった論理の枠組みの中で、如何にそれに合わせるかというトレーニングをしていると、思考力が低下してしまうということらしく、ミョーにナットクすると同時に、コワいなぁ、と思わされました。