辞めたくても、辞められない!/溝上憲文

 

辞めたくても、辞められない! (廣済堂新書)

辞めたくても、辞められない! (廣済堂新書)

 

 

 今野晴貴さんの『ブラック企業』でその実態が詳らかにされたのですが、人手不足が叫ばれるようになった昨今、影を潜めたのかと思いきや、カタチを変えて悪質さは増しているようです。

 今野さんが取り上げられたときは主に“使い捨て”の問題が取りざたされていましたが、この本では主に“辞めさせない”現象を取り上げます。

 空前の人手不足を受けての人材の確保のためにブラック企業からの退職を希望する人に対して、様々な策を弄して、時には脅迫も交えた手口を紹介されています。

 作者である溝上さんはそんな様子を小林多喜二の『蟹工船』に描かれた強制労働になぞらえておられて、その歪んだ構図を指摘されます。

 それにしても、それを受け入れてしまう労働者側としても、人手不足とは言え、一度正社員でなくなると再び正社員に復帰することが難しいという状況もあり、かつ労働法制についての知識が著しく欠如していることにも付け込まれており、最悪自死を選ぶ人までいるようです。

 正しい知識を身に付けて、毅然と行動することも時には必要なようです。