力を引き出す/原晋×原田曜平

 

力を引き出す 「ゆとり世代」の伸ばし方 (講談社+α新書)

力を引き出す 「ゆとり世代」の伸ばし方 (講談社+α新書)

 

 

 「マイルドヤンキー」「さとり世代」など若年層の消費行動をキャッチーなキーワードを駆使して紹介してこられた原田さんと、青学の駅伝部を強豪に押し上げた原監督との「ゆとり世代」を如何にして能力を引き出すかということについての対談です。

 原田さん自身も、ご自身が主宰する若者研究所において、学生とともに作業をされることが多いということで、若い人たちの接する機会も多いということで、原監督との対談に同調するところが多くて、予定調和的でオモシロくなかったんじゃないかといったことを冒頭でおっしゃっていますが、その年代に接することの少ないモノとしては十分に興味深い内容でした。

 イマイチ覇気がなくて、何を考えているかよくわからないとオジさんたちは言いますが、まあいつの時代もそう言うのはオジさんたちの世の常であるワケで、若い人が気に病む必要はまるでないのですが、原監督によると、“個”を尊重することで、大きなチカラを発揮する傾向があるようです。

 割とメディアに対しては、おちゃらけたことを言っていることが多いのですが、学生に対してはキビシイところは、かなりキビシイようなのですが、ちゃんと学生を個人として重んじているからこそ、あれだけのチカラを引き出せているんだろうな、という感じです。

 

あなたの会社が最速で変わる7つの戦略/神田昌典

 

あなたの会社が最速で変わる7つの戦略

あなたの会社が最速で変わる7つの戦略

 

 

 最近、以前の著作の焼き直しとか、他の人との共作とか、ブレイク当初のパワーが感じられないかった神田さんでしたが、どうも大病をされていたとのことで、今回のも、オッと思いましたが、実質的な執筆はやっぱり他の方のようで…

 先日紹介した本でも、神田さんが以前から「会社が無くなる」ということを再三おっしゃっていることを紹介しましたが、今回の本でも、このまま従来のやり方のカイゼンでは最早「生き残る」ことは覚束ないということを指摘されています。

 だから、売上を数10%伸ばすとかっていうのではなくて、いきなり数倍、数十倍にする方法を考えないとダメだということで、まあ、イノベーションを志向する必要があるということなんでしょうけど、それが従来に比べて圧倒的にやりやすくなっているようです。

 というのも、何かと何かを結びつけるビジネスを作ったり、それを利用して従来の業界の常識では考えられないビジネスモデルを作り出すことも可能だということで、何と何を結び付ければ新たな価値を生み出せるんだろう、と考えることが必要だということです。

 

ビジネスエリートの新論語/司馬遼太郎

 

 

 司馬遼太郎さんが新聞記者だった昭和30年に、本名である福田定一名義で書かれた本です。

 「ビジネスエリートの新論語」ということなのですが、モチロン時代背景から言ってどっちとかいうと“サラリーマン”っていう方がずっと“らしい”のですが、サラリーマンの生活の様々な場面で役立つ、古今東西の格言を紹介します。

 意外だったのがその文体で、のちの端正な文体とは異なり、言ってみれば、『洋酒天国』に執筆されていた時の開高健さんを思わせる軽妙なタッチで、その時代のサラリーマンの悲哀をそこはかとなく感じさせます。

 ただ、選ばれる格言と言うのが、その後の司馬さんを思わせる博識ぶりで、古典から、同時代の本からの引用など、あらゆるところからでてきます。

 “エリート”ではなく、市井のサラリーマンの悲哀は、今もそんなに変わってないんだな、とクスッとさせられる本でした。

 

新・所得倍増論/デービッド・アトキンソン

 

デービッド・アトキンソン 新・所得倍増論

デービッド・アトキンソン 新・所得倍増論

 

 

 『デービッド・アトキンソン 新・観光立国論』で一躍注目を浴びたアトキンソンさんですが、2匹目のドジョウを狙ったっぽいタイトルはともかくとして、如何にして日本を「再生」させるかという本です。

 “提言”と言いつつ9割方はこれまでの日本のダメダメなところの指摘で、いちいちイタい指摘です。

 戦後、奇跡の復興を果たした日本経済ですが、その原因として日本人の勤勉さやものづくりなんかが挙げられますが、実は主要因は、先進国としては異例ともいえる人口増加によって経済規模が拡大したことによるものだと指摘されています。

 それを自分たちの能力の高さだとカン違いした日本人は、その後カイゼンの努力を怠り、人口増加の鈍化とともに経済成長も鈍化したということで、「失われた20年」は決して単なる不運ではないということです。

 でも、長らく日本を見ているアトキンソンさんからすると日本の潜在能力はこんなもんじゃないということで、様々な提言をされます。

 そもそもGDPと言うのは“人口×生産性”で導き出されるモノであり、出生率の向上が見込めない中、生産性を上げて行くことに注力すべきで、そのために、

 ・企業や役所における“先例”主義を改め効率を上げる
 ・女性の能力を十全に活用する
 ・国を挙げた取組で企業にプレッシャーをかける

ということを推奨されています。

 現に観光業においては、国を挙げての外国人観光客の誘致が実を結びつつあり、同様の取組が生産性向上に向けてなされれば、成果が見込めるはずだとおっしゃいます。

 あと、実は人口増加のために、移民の受け入れという手もあるのですが、それをダイナミズムの源泉として経済成長を続けてきたアメリカが、それを“放棄”しようとしているのは注目に値するところかも知れません。

 

古市くん、社会学を学び直しなさい‼/古市憲寿

 

古市くん、社会学を学び直しなさい!! (光文社新書)

古市くん、社会学を学び直しなさい!! (光文社新書)

 

 

 新進気鋭の社会学者としてメディアの露出も多い古市さんなのですが、実は博士号もなく、社会学者を名乗ることに非難する向きもなくはないということだそうです。

 だからというワケではないんでしょうけど、日本の主要な社会学者12人に「社会学とは?」と問いかけることをキッカケにした対談をされます。

 社会学と言うのは、門外漢だけではなく、それを職業にする人に取っても実態が捉えにくいモノのようで、古市さんの問う社会学の定義について、意外なほどその内容がバラけています。

 というのも、社会学の扱う範囲の広範性というのもあるワケですが、それだけに他の学問だったらあるはずの汎用的な理論と言うのが存在しにくいようで、よりそれが曖昧な印象が強くしているようにも思えます。

 でも、それだけにダイナミズムがあるともいえるワケで、あとがき古市さんが触れられているように、社会学の魅力が伝えられればとおっしゃっている目的は十二分に果たしているんじゃないかと、ワタクシ個人としては感じました。

 社会学って、メチャメチャ面白いかも!?

 

上司の頭は丸見え。/川崎貴子

 

上司の頭はまる見え。

上司の頭はまる見え。

 

 

 よく意図の分からないタイトルなのですが、人材派遣を手掛ける会社を経営されている方が、職場における女性を活用することの重要性を説いた本です。

 昨今はある程度女性も職場で重要な任務を果たすようになっては来ているようですが、それでもまだまだ質量ともに充分とは言えず、それってかなり損をしていますよ、ということです。

 というのも、どうしても男性は仕事を“論理”で進めてしまいますが、それだけでは取りこぼしてしまう部分が多いんじゃないかとということです。

 女性を顧客とする企業ならモチロンのことですが、そうではない場合でも、仕事を“感性”で捉える女性の視点でも仕事を見つめなおすことが非常に重要なようです。

 ただ女性は、そういう“感性”の部分を男性が理解できるコトバで説明するのはニガテなことが多いようなのですが、それを焦れずに引き出して活用することがビジネスチャンスにつながることが多いんじゃないかと指摘されています。

 そういう風にウマく女性を活用するためにハード面・ソフト面での整備を進めている会社の業績の伸びが期待できるようで、これは活かさない手はないですよね!?

 

サポーター新世紀/宇都宮徹壱

 

サポーター新世紀―ナショナリズムと帰属意識

サポーター新世紀―ナショナリズムと帰属意識

 

 

 この本は、2002年の日韓W杯で如何に海外から観戦に訪れるサポーターたちを迎えるのか、というテーマをもって、1998年のフランスW杯を、サポーター観点から追った本だということです。

 このときはまだフーリガンの余波もあって暴動とまでは行かなくても暴れるサポーターもあったのですが、フランス代表が優勝して盛り上がったこともあって、サポーターを迎える姿勢も、シニカルなフランス人のイメージからすると、かなりウェットな対応があったようで、著者である宇都宮さんの印象もかなりポジティブだったようです。

 ただ日韓W杯が、韓国側はともかくとして日本側はどうだったのかというと、結構クールな印象を持たれたのではないかと危惧しますが、「お・も・て・な・し」を掲げた東京五輪がこの反省を踏まえて、暖かなモノになればいいな、と思います。