ゴミ情報の海から宝石を見つけ出す/津田大介

 

 

 ネット関連を中心に活躍されているジャーナリストの津田さんによるネットの「活用」法です。

 読者からの様々な質問に答えるカタチで構成された本なのですが、ネットでの情報の取り扱い方から、ネットに絡んだキャリアデザインの話まで、幅広いトピックが取り上げられます。

 ネットと言うと結構アヤシイ住人が多い印象がありますが、代表的な「ネット住人」の一人である津田さんのスタイルと言うのは想像を遥かに超えて「真っ当」です。

 以前紹介した池上さんと佐藤さんによる情報活用の本で取り上げられていたネットの活用法からすると、ネットへの親和度が高い津田さんならではの「作法」が見受けられるところもありますが、大部分はお二方の情報活用法と共通するところも多く、やはり情報リテラシというのは、メディアが変わったからと言って、そんなに方法論が変わるもんじゃないだな、と感じます。

 ネットに色メガネをお持ちの方におススメの本です。

 

 

応仁の乱/呉座勇一

 

応仁の乱 - 戦国時代を生んだ大乱 (中公新書)

応仁の乱 - 戦国時代を生んだ大乱 (中公新書)

 

 

 2017年上半期に大きな話題となった本をようやく手に取りました。

 応仁の乱と言うと、その後に戦国時代を引き起こし、日本史の中でも底辺の層の人々が歴史に登場することになるエポックメイキング的な出来事だったにも関わらず、あまりそれ自体に明確な意義付けがされていなかったんじゃないかという問題意識から書かれたということです。

 元々、足利将軍家のお家争いに端を発した騒乱と言われていますがそれだけではなくて、様々な痴話ゲンカが絡みに絡んで、最後にはグダグダになってしまったというのが実情のようですが、元々あまり厳格な統治機構を持たずに運用面で持っていたというのが室町幕府の実情のようですが、そういう運用面すら機能しなくなって、崩壊へのカウントダウンの契機となったのは確かなようです。

 ただ、この騒乱をキッカケに一揆などの民衆が自らのアクションが事態を動かすことができるんじゃないかということに気づいたということが、日本における近世の幕開けを導いたということで、やっぱり意義深い出来事だったんだなぁ、ということで…

 

ニッポンを繁盛させる方法/島田紳助、東国原英夫

 

ニッポンを繁盛させる方法 (角川oneテーマ21)

ニッポンを繁盛させる方法 (角川oneテーマ21)

 

 この本は2007年に出版された本で、東国原さんが宮崎県知事で、島田さんは芸能活動をされていた時期に出版されたモノなのですが、お二人が“日本再生”について語られた対談モノです。

 東国原さんが宮崎県知事となってからの宮崎県の振興策を手掛かりに“日本再生”を語られているのですが、そこでナットクしたのが、東国原さんのようにある意味“突き抜けた”取組があって、それが成功を収めると、横並び意識の強い日本人はそこに追いつこうとするはずだということで、如何に“突き抜けた”モノを生み出していくかということが“日本再生”の起爆剤になるとおっしゃいます。

 結局、東国原さんも宮崎県ではそれなりの成果を残したモノの最早“賞味期限”切れ感は否めないところなのですが、この本を読んでいると島田紳助さんが政治家にならなかったのはもったいなかったなぁ、と…

 

 

シンギュラリティ・ビジネス/齋藤和紀

 新年あけましておめでとうございます!

 今年も当ブログをよろしくお願いします!

 新年第一弾の記事は、昨年読んだ本の中で最も衝撃を受けた本を紹介したいと思います。

 

  “シンギュラリティ”というコトバになじみの “シンギュラリティ”というコトバになじみの無い方も多いと思いますが、これはその世界の権威によると「人間の能力が根底から覆り変容する」レベルなんだそうですが、Wikipediaなんかを見ると“AIの知能が人間の知能を超える”レベルと言う受け止め方をされていることが多いようです。

 最近“Society5.0”というコトバが取り沙汰されるようになってきていますが、


   Society1.0:狩猟採集社会

      Society2.0:農耕社会

   Society3.0:工業化社会

   Society4.0:情報化社会


と来て、AIの進展に伴う“知能化”社会ともいえるのがSociety5.0ということだそうで2.0→3.0が千年単位、3.0→4.0が100年単位となって、更に4.0→5.0が10年単位での進化となっていますが、このような加速度的な進化を「エクスポネンシャル」な進化と言って、直線的な進化ではなく、2次関数のグラフのような進化を遂げ、ある時点で無限の進化をし始めるということですが、それが2045年に起こるということです。

 既にAIが普及し始めて自動運転などの分野でその成果が出つつあるのですが、そういう進化が社会のあらゆるところに現れて、産業構造や社会規範などのあらゆる面での変化につながるということです。

 自動運転はモチロン、太陽光パネルの進化によりタダで一蔵でもエネルギーが入手できるとか、遺伝子技術の進化で人間の寿命が無限に伸びるとか…


 何か昔、未来の予想図とかって、チューブの中を列車が走るとかテレビ電話を描いた図がありましたが、この本はそれを見ている感じがしたのですが、よく考えると昔の“未来予想図”って何らかのカタチでほとんどが今やフツーの概念になっていることを思えば、この本は未来の予言書と言えるかも知れません。


 以前紹介したAI関連の本でも、ヒトは働かなくてよくなるという“予言”がありましたが、この本でも同様の“予言”をされていて、この本では馬を引き合いに出されていて、働かなくてよくなったヒトは、同じく労働から解放された馬のように、ただ草を食んでいればよくなるということですが…


 色んな意味でかなり衝撃的な本でした。

ウェットな資本主義/鎌田實

 

ウエットな資本主義(日経プレミアシリーズ)

ウエットな資本主義(日経プレミアシリーズ)

 

 

 諏訪中央病院名誉院長で時折メディアでもコメンテーターとして出演されている方の著書です。

 昨今、貧富の格差の拡大など資本主義の限界が取り沙汰されていますが、かといってそれに代わる有効な処方箋が見出せているわけでもなく、どうすればいいんだ?という状況が広がっているワケですが、この本で鎌田さんがおっしゃっていることが一つのヒントになるかも知れません。

 この本は、今や悪名高き迷走の民主党政権時代の2010年に出版されて、出口無きデフレのドン底の時期だったのですが、そんな中でもただ資本主義の悪いところを重箱の隅をツツくワケではなく、過度な競争を回避するとか、競争に敗れたモノへのセーフティーネットを確保するといった、運用面を改善することにより、より健全な社会を実現しようということを提唱したものです。

 かなりバランスの取れた議論だという印象があって今なお有効な処方箋になり得るんじゃないかと感じるのですが…

 

 ということで、「血の通った」経済が実現することをいのるという、今年最後に相応しい記事となりました。

 

 今年も2014年以来続けている毎日の更新を達成することができました。

 来年もボチボチ気になった本を紹介していきますので、引き続きご愛顧の程、よろしくお願いします!

「やさしさ」過剰社会/榎本博明

 

「やさしさ」過剰社会  人を傷つけてはいけないのか (PHP新書)

「やさしさ」過剰社会 人を傷つけてはいけないのか (PHP新書)

 

 

 タイトルには「やさしさ」過剰とありますが、その「過剰」の部分ってホントにやさしさ?って言うのがこの本の趣旨のようです。

 というのも表面的に「やさしく」振る舞って無難に過ごすことで自分が傷つかなかったり、メンドーなことに巻き込まれることが無いようにすると言う人が少なくないからだそうです。

 ホントに相手のことを思っていれば、注意や警告をすべきところを、相手と気まずくなりたくないということでテキトーなコトバでお茶を濁したりすることを「やさしさ」と勘違いしていることが話し手聞き手の双方にあるようで、そういうウワベだけの関係が蔓延してしまっているようです。

 必ずしもディープにまじりあう必要はないのかも知れませんが、自分がホントに大事だと思っている相手…例えば家族だったり親友だったり…に、ウワベだけの心地よさで取り繕うのは、長い目で見るとマイナスになるんじゃないかということをよく考えるべきなんじゃないかということを考えさせられました。

 

使える語学力/橋本陽介

 

 

 7カ国語を操られる方が、紹介する「使える」外国語の身に付け方です。

 結論から言いますとこの本、かなり端的に外国語を「話せる」ようになるためにやるべきことにフォーカスして紹介されていて、相当実践的です。

 そもそもコトバを話せるようにするための過程と、従来の日本での「語学」教育のプロセスが、本来「話せる」ようになるために必要なプロセスと相当異なっていたということで、日本での一般的な語学習得プロセスが「文法の理解→単語の理解→文の理解→状態の理解」なのに対し、「話せる」ようになるためには「状況の理解→文の理解→単語・文法の理解」とすべきなんだそうです。

 ということで、共通する「状況の理解」を媒介にすることと、それをどういった「音」で表現するのか、ということにフォーカスすることによって、格段に「話せる」ようになるスピードが高まるということです。

 あくまでも「話せる」ようにするためには、文字を介在させることが相当な障害になるということで、そこは強く意識すべきだということです。

 で、1つ言語を習得済みの人は、そういうことをカラダで覚えているので、あまり苦労をせずに対応できる言語を増やしていけるということで、とにかく「音」に集中して、最初の言語を習得してみませんか?