打ちのめされるようなすごい本/米原万里

 

打ちのめされるようなすごい本 (文春文庫)

打ちのめされるようなすごい本 (文春文庫)

 

 

 ロシア語の通訳であり、作家、書評家としても知られる米原さんが、逝去されるまで週刊文春に連載されていた“読書日記”と、生前書かれた書評を集めた本です。

 「知の怪人」佐藤優さんが再三米原さんの本を推薦されていたので手に取って見たのですが、佐藤さんや立花さんのように「教養」を前面に押し出す感じではないんですけど、ちゃんと読書を血肉化し、生きるチカラに変えておられるのが印象的です。

 特にガンの罹患が判明してから、その治療法について様々な本を読み漁り、それを自分の中で咀嚼した上で、自分を“実験台”にして治療法を試されると言う壮絶な体験を紹介されているのが印象的です。

 それを逝去される1週間前まで書かれていたようなのですが、あまり悲愴感を前面に押し出されることなく、むしろ笑い飛ばすようなところさえ感じさせるところに、米原さんの“強靭さ”を強烈に感じます。

 主題は、“読書日記”と“書評”なのですが、確かに本の紹介があらゆるところで出てくるのですが、あまりにも米原さんの生活と本が密着していて、本から得たことと、それを生きていく中に自然にフィードバックされているところに、“本を読む”ことの理想的なあり方を示されているように思えました。