残業の9割はいらない/本間浩輔

 

残業の9割はいらない ヤフーが実践する幸せな働き方 (光文社新書)

残業の9割はいらない ヤフーが実践する幸せな働き方 (光文社新書)

 

 

 ヤフーの人事執行委員の方が語られる“働き方改革”です。

 この本の最後の方で本のタイトルのつけ方の難しさについて語られていますが、“働き方改革”が世間的には単純に“残業規制”としか受け取られていないのではないかという危惧もあってか、こういうタイトルにされたようですが、真に“働き方改革”を実現するには旧来的な日本企業にとっては人事制度を根底から見直すという位の覚悟が必要なんじゃないかと指摘されます。

 多くの日本企業は出口さんがよくおっしゃられる「工場モデル」に基づく制度設計をされていて人事制度もその例外ではなく、終身雇用制や年功序列、新卒一括採用などの世界的に見ても稀な制度であり、「工場モデル」に基づく運営では最早成果を得るのは困難だということで、昨今財界のトップが相次いで終身雇用の放棄を示唆することになっています。

 そんな中で人事制度がどうあるべきなのかということについてヤフーでは「企業として勝つため」「社員が幸せになるため」ということを究極の目標として、如何に人事制度を設計すべきかと考えられているようです。

 ヤフーの施策の中には「週休3日制」など旧来的な人事制度に慣れた目からするとトッピに思える内容もありますが、成果さえキチンと出してくれれば勤務形態は二の次だということもあって、社員のシアワセにつながるのであれば最大限配慮しようという姿勢を取られています。

 そういう制度の中でキチンと“成果”を評価する仕組みが不可欠だということで、日本企業の多くが“失敗”した成果主義の定着が、今後の働き方改革において不可欠だということで、その成否は成果主義との密接なリンクがキモとなり、それができない企業に取って働き方改革は単なる残業規制に終始してしまい、いずれ競争力をなくしていってしまうだろうとおっしゃいます。

 また新卒一括採用も“働き方改革”にはそぐわず、必要なスキルを持った人をタイムリーに雇用できるような制度への移行が必須のようです。

 ここ10年の企業の生き残りは人事制度改革にかかっていると言っても過言ではなさそうです。