観光亡国論/アレックス・カー

 

観光亡国論 (中公新書ラクレ)

観光亡国論 (中公新書ラクレ)

 

 

 東洋文化の研究家で地方での観光客受け入れの支援などもされている方が2019年初頭時点の日本での「観光立国」の問題を語られます。

 東日本大震災の影響で一旦落ち込んだものの2012年以降日本を訪問する外国人観光客は急激に増加しており、当初2020年に2,000万人としていた目標を2016年にアッサリ前倒しで達成し、2020年時点での目標を倍の4,000万人に上方修正しています。

 ただ急激な外国人観光客の増加は様々な軋轢も生んでおり、特に京都などの著名な観光地では地元の人の生活が大きく脅かされる自体になっているということです。

 観光客を受け入れる地域の自治体も従来のようにただ誘致を促すだけで、無策で受け入れていれば破綻は目に見えているということで、喫緊の対策が必要となっています。

 その対策としてこの本で推奨されているのは「ゾーニング」という細かく地域を分けて、それぞれに相応しい対応策を検討し、キメ細やかに施策を実施することで来訪者のコントロールをしやすくするようにできるということです。

 『新・観光立国論』のアトキンソンさんもおっしゃっていたように日本の史跡の拝観料はあまりにも安過ぎることをこの本でも指摘されていて、そのことであまりその対象に興味のない人も呼び込んでしまっているということで、思い切って拝観料を大幅に値上げしてホントに興味のある人だけに来てもらえるようにするということも考えてみるべきでは、とおっしゃられています。

 カーさんは昨今の外国人観光客の急増を江戸時代の黒船来航以来の大規模な外圧だとおっしゃっておられて、即効的な対応は難しいものの、早急にこれまでの発想を転換して対応すべきだとおっしゃっておられて、そうすることで外国人観光客にも地元の人にもメリットをもたらす方向で検討をすることが持続的な対応には不可欠なようです。