ニッポン未完の民主主義/池上彰、佐藤優

 

 

 池上さんと佐藤さんの対談本の最新刊ですが、今回のテーマは「民主主義」で、佐藤さんからの提案だということです。

 

 BrExitやトランプ政権など一連のポピュリズム的な現象の世界的な広がりから、コロナ禍において、民主主義を標榜する国家が、中国など全体主義的な国家と比較して感染対策が上手く行かず多くの死者を出したことなどから、かつてないほど民主主義という体制自体への疑問が向けられていることもあって、このテーマを提案されたということです。

 

 なぜ、そうなったこということを紐解くために、そもそも民主主義がどういうモノなのかということを解説されているのですが、古くはアテナイから始まって絶対王政を打倒して民主主義を樹立した17~18世紀を経た経緯をたどりながら民主主義の機能を探ります。

 

 民主主義を意味するDemocracyは元々「衆愚政治」と訳されて、多くの民衆によってえらばれる政策は、得てして”愚かな”選択に基づくものが多くなる危険性というのが早くから指摘されており、そういう民主主義の蓋然的なリスクが昨今ポピュリズムとして表れているということのようです。

 

 そういうリスクを避ける手段として、手続きの慎重さというモノが求められて、アメリカの大統領選がその表れだと指摘されていますが、それでもトランプのようなハチャメチャな指導者が現れてしまうところに、民主主義の制度疲労とも言えるような状況になってしまっているような気がします。

 

 さらに日本の政治状況についてお二方が深い憂慮を示しているのが、7年余りにわたる安倍政権によって、政権が増長してしまい、選挙で勝っているんだから何をしてもいいだろう、というような感覚でいるんじゃないかということを指摘しておられ、菅政権もそういう姿勢を受け継いでいるということで、相当民主主義としては危険な状態にあるということです。

 

 それだけに我々としては、少なくとも健全なチェック機能を回復するためにも、キチンと批判的な投票をして行かなくてはならないようです。