吠えない犬/マーティン・ファクラー

 

吠えない犬 安倍政権7年8カ月とメディア・コントロール

吠えない犬 安倍政権7年8カ月とメディア・コントロール

 

 

 菅首相の”天敵”望月衣塑子氏との対談本である『権力と新聞の大問題』を出版されていることでも知られるニューヨーク・タイムズの元東京支局長であるマーティン・ファクラー氏が語る、官邸による日本のメディア支配と、日本のメディアの病巣を語られます。

 

 望月氏との共著でも安倍政権のメディア統制を問題視されていましたが、それを牛耳っていたのが当時の菅官房長官だということもあって、NHK『ニュースウォッチ9』のキャスターである有馬氏が、菅首相の出演時にキビシいツッコミをしたことで官邸に睨まれ、4月の改編でキャスターを降板することになったように、官邸のメディア支配はより強化されたように見えます。

 

 ただ、これは日本だけの現象ではないようで、アメリカでもトランプ政権によるメディア統制は、安倍政権も顔負けの内容だということで、その状況を紹介されていますが、ファクラーさんは安倍政権もトランプ政権同様、ポピュリズム的な要素が多いと評価されているのですが、ポピュリズム的な政治スタイルとメディア統制というのは、ある意味セットになるモノみたいです。

 

 それ以前に、いわゆる記者クラブ制度で権力に飼いならされた日本の大手メディアのジャーナリストは、自ら取材を重ねて権力の不正を暴こうとするなんていう考えも起こらず、お上の発表するがままに権力に都合のいい情報だけを垂れ流すに過ぎない存在に甘んじていることに、日本に民主主義そのものの危機を指摘されています。

 

 また、そういう風にメディア自体が国民からの信頼感を低下させていることもあり、新聞の発行部数が急降下している現状も紹介されており、日本の新聞社の旧態依然たる経営姿勢が、新聞メディアを存亡の危機に陥れかねないことも併せて指摘されています。

 

 この本のタイトルは、元々英語でメディアのことを、"watch dog"(番犬)と言って、権力の専横を許さない”番犬”の役割をするという意味で、そう読んでいたということなのですが、権力にシッポを振るばかりの日本の大手メディアは、最早ジャーナリストですらないんじゃないかという強烈なメッセージと叱咤激励が込められているようで、是非とも日本のジャーナリストの皆さんには手に取っていただいて、ご自身のふがいなさを猛省してもらいたいところです。