メディア・リテラシー/菅谷明子

 

メディア・リテラシー―世界の現場から (岩波新書)
 

 

 ニューズウィーク誌勤務経験もあるジャーナリストの方が、欧米のメディア教育について紹介された本です。

 

 先日、ニューヨーク・タイムズの元東京支局長であるマーティン・ファクラー氏が著書吠えない犬』の中で、日米のメディア統制の状況を紹介されているのを取り上げましたが、日本ではどこかメディアが伝えることにあんまり疑いを差し挟まない傾向が強いのに対し、欧米ではメディアに対して、まず批判的な観点から入ることが多いようで、子どもたちに学校でのカリキュラムとしてそういった視点を身につけるためのメディア教育が発展しているようです。

 

 1988年にイギリスでそういった取組が始まり、当初はメディアの発信を読み解くといった趣旨で、国語の一環として教えられていたということですが、最近では独立した科目としてメディア教育がされており、かなり子どもたちの関心も高いようです。

 

 需要の内容としては、子どもたちと模擬的に番組を作成する演習をして、作り手がどういう意図で番組を作っているのかを時間することで、メディアのホンネをうかがい知るといったこともされているようで、報道について自分なりの考え方を身に付けて、メディアが言っていることを鵜呑みにしないようになることを目標としているようです。

 

 そういった動きについて、カナダやアメリカの事例も紹介されており、やはりこういう民主主義の根幹に対する考え方が、どこか人権が”与えられた”日本とは大きく違うように感じます。

 

 昨今のメディア統制もさることながら、やはりメディア自体も営利企業であることを、少なくとも念頭に置いて報道を見ないといけないというのはアタマに置いておくべきでしょうし、そういう観点を学校教育に取り入れることは、特に日本では必要なんじゃないかと思うのですが、そういう官邸に都合のよくない施策が取り入れられることはないのかなぁ…