すぐ忘れる日本人の精神構造史/新谷尚紀

 

 

 タイトルでは「すぐ忘れる」とありますが、その他日本人の多くに共通する特徴的な「態度」について、その形成を促した歴史的な背景を民俗学的な視点から追った興味深い本です。

 

 明治維新~敗戦を経て近代化を成し遂げ、一時は世界に冠たる経済大国となった本ですが、その精神構造というか、行動のバックボーンみたいなモノは、古代から水田稲作を中心とする集団生活をしてきた多くの日本人の身に沁みついた思考や行動の特徴なんだそうです。

 

 そういった背景で見について特性として、群れたり、すぐ忘れたり、過度に空気を読んだり、政治への関心が強くなかったりといった特徴が出てきたようですが、そういった特徴というのが、為政者にとってはかなり都合がよかったということで、徳川政権が農民に苛烈な政権だったにも関わらず260年もの長期にわたり安定的な運営を実現したことや、自民党の腐敗政治にも関わらずデモのひとつもロクに起こることなく、粛々と生活してきたことを想うと、さもありなんと思ってしまいます。

 

 こういう精神構造を持った人が多数を占めていると、人権教育なんて言っても根付くはずもなく、今後とも権力者の暴走や腐敗を止めることもできないのかと思うと、結構悲しくなってしまいます…