空気の検閲/辻田真佐憲

 

空気の検閲 大日本帝国の表現規制 (光文社新書)

空気の検閲 大日本帝国の表現規制 (光文社新書)

  • 作者:辻田 真佐憲
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2018/03/15
  • メディア: 新書
 

 

 戦前の日本における検閲の実態を紹介された本です。

 戦前の検閲なんていうと、戦争に向けた苛烈な出版統制を思い浮かべますが、確かにそういう側面はあるものの、そればかりではなく、エロ・グロ・ナンセンスといった風紀維持の側面もあり、まずはそういったところから紹介されています。

 検閲官も、検閲というコトバから我々が想像しがちな厳格さばかりではなく、エロ小説校閲の経験から評論家になった人もいたということです。

 ただ、例えば天皇への不敬に関する表現を見逃してしまった場合、免職や告発の危機もあったということで、一字一句丹念に読む必要があり、かなり神経を使う仕事で精神を病むことも多かったようです。

 後半になると国体維持や戦争に関する報道などへの検閲が取り上げられ、我々が想像するような出版統制について紹介されます。

 日本においては、検閲対象の物量に対してスタッフの数が圧倒的に不足していたということもあり、大手メディア等の統制を通して、こういったモノは発禁になるよ、といった基準を示すことで事前に抑制しようとしていたということで、そういった意味で「空気」の検閲と表現されているということです。

 ただ、そういうやり方が表現の自制ということで忖度を生むことになり、実質的な言論統制につながっていたという側面もあったようです。

 そういう意味じゃ、今や実際の検閲自体はなくても「空気の検閲」は存続しているのかも!?