労働者階級の反乱/ブレイディみかこ

 

労働者階級の反乱 地べたから見た英国EU離脱 (光文社新書)

労働者階級の反乱 地べたから見た英国EU離脱 (光文社新書)

 

 

 英国在住で、ご自身も労働者階級の人の妻であるという日本人ライターがBrExitの「労働者階級の反乱」としての側面を紹介された本です。

 当初日本での報道では移民の流入を嫌う保守的な高齢層が離脱支持の多数を占めているといて、若年層はワリを食っているという見方が紹介されていましたが、どうもそれは皮相的な見方だったようで、その後の英国では労働者階級の積もり積もった不満が移民の流入による排外的な空気の醸成と、それに乗っかろうとしたポピュリスト的な政治家が火をつけた結果、労働者階級が離脱への支持に流れたという見方が支配的なようです。

 “英国病”と言われる長きに渡る不況のしわ寄せを受け、満足な収入を手にできる職に就くことが困難であり、英国がIMF管理下に入ることによる緊縮財政で、低所得層への支援政策が次々と廃止され、そんな中でも富裕層へのしわ寄せは少なく、格差がさらに拡大するようになって行ったということです。

 そういった背景はトランプ政権の誕生につながった、アメリカでの“プアホワイト”との類似性を指摘する見方もあるのですが、この本ではちょっと違う見方をされていて、英国ではひたすら虐げられてきた人たちの不満の爆発という側面があると指摘されています。

 そういった労働者階級の横顔と虐げられてきた歴史、その結果としてのBrExitを丹念に紹介されています。

 ただ、離脱したからと言って、彼らが報われるワケでもなく、その結果発生が想定される悪影響のしわ寄せは、また彼らの生活を悪化させることにつながるのでしょうか…