防衛省と外務省/福山隆

 

 

 自衛隊で軍事面のインテリジェンス活動に従事されていた方が日本のインテリジェンスを語ります。

 「知の怪人」佐藤優さんが外交面のインテリジェンスを紹介されるようになって「インテリジェンス」というコトバも一般的になっているように思えます。

 よく言われるように日本はインテリジェンス活動が諸外国と比べて貧困だということをこの本でも指摘されていますが、それは戦後アメリカの傘の下でのインテリジェンス活動ということで、依存体質が出来上がってしまったことと、元々日本人がインテリジェンス活動と相容れない性善説の考えを持つ人が多いことも原因の一つだとして挙げられています。

 ただ戦国時代には忍者などにより盛んに諜報活動が行われてきたように、必ずしも民族的にインテリジェンス活動への適性がないわけではなく、相対的にアメリカの影響力が下がり、中国が台頭している現状では、状況に応じた「健全な危機感」を持つことが重要で、そのことによりインテリジェンス活動への国民の理解が共感を得て、増強することが喫緊の課題だとおっしゃいます。

 それにしてもこの方、難しい内容もあるインテリジェンス活動について端的にわかりやすく説明されていて、例示も非常に的を得ていて、インテリジェンス活動をされる方って、文章力も秀でているモノなのかな、と驚きました。

 

官能教育/植島啓司

 

 

 時折メディアでもお見掛けする宗教人類学の植島教授による「自由恋愛のススメ」です。

 なかなか刺激的な内容で、そもそも何故不倫がダメなの?その方が自然じゃない!?ということが冒頭から度肝を抜かれます。

 そもそも生物学的にも愛情が継続するのは子供が生まれてから庇護を必要とする4年程度に限られるようで、それ以上愛情が継続することを期待するのは不合理で、近代国家形成の上で家族制度に一定の意義はあるとはいうものの、だからと言って現在の日本に置けるように不倫を過度にタブー視するのは不自然なのではないか、とおっしゃいます。

 さらに、自由恋愛がフツーになると嫉妬などの恋愛にまつわる不合理な感情が軽減されるのではないか、とまでおっしゃいます。

 ちょっとついていけないというのが正直なところですが、でもそうなったらいいなぁと思う自分があるのも正直なところだったりします。(笑)

 

 

インバウンドの衝撃/牧野知弘

 

 

 不動産コンサルタントの方が語る「インバウンド」現象に関する本です。

 この本が書かれたのはまだ「爆買い」の全盛期で、その頃からすると昨今は随分落ち着いたのですが、それでも訪日外国人は着実に増加しています。

 そんな中での「インバウンド」の現象面と、如何にして訪日外国人を誘致するかということについての内容で構成されています。

 現象面としては、この本が出版された2015年以降、メディアの報道で散々紹介されてきたので、現時点では“今更”な内容が多いことや否めないのですが、訪日外国人の誘致に関するトピックでは、不動産コンサルタントとして、ホテルなどのインバウンド関連の物件を手掛けた経験などから提案される内容にはうならされます。

 特に観光における「動線」の設定を強調されていて、東京‐大阪間のいわゆる「黄金ルート」上だったら苦労は少ないのですが、そうでなければ、自分の地元だけでなく、複数の訪問先との連携で「動線」をデザインすることで誘致の確率が高まるということです。

 

ビジネスマンのための「幸福論」/江上剛

 

 

 ビジネス関連の小説を手掛ける江上さんがご自身の経験を踏まえてビジネスマンにとっての「幸福」を語ります。

 それにしてもこの方、こういう回顧録的な本が多くて、ワタクシが読んだだけでもかれこれ3冊くらい読んだ気がするのですが…

 元々銀行員だったということで、激しい出世競争の渦中にあったということですが、結果として出世をしたからといって、それがシアワセにつながるとは限らない(むしろ、そうではないことの方が多い)ということで、ご自身としては、会社の同僚だけでなく、家族や地域の人も含めて、信頼されたり認められたりすることに喜びを感じられるということで、まあ結論としてはありがちっていえばありがちなのですが、ミョーに深くナットクしてしまいました。

 

知の仕事術/池澤夏樹

 

 

 作家の池澤夏樹さんが語る「知的生産の方法」です。

 この手の本って、最近では池上彰さんと佐藤優さんの共著だったり、梅棹忠夫さんや渡部昇一さんが書かれた古典ともいえる本も読んでみましたが、どれも知的好奇心を刺激されるモノでした。

 この本はフィクションを手掛けられる池澤さんの手によるモノだということで興味をそそられて手に取ってみたのですが、これまた素晴らしい本でした。

 池澤さん自身冒頭で、商売毒である「知的生産」の技術をなんで切り売りしなきゃいけないんだ!?ということで、これまでこういうノウハウ的なこと紹介するのは避けられていたということですが、昨今の世間における「知的生活」の貧困さに危機感を抱いて、ご自身のノウハウを紹介されようと決意されたということです。

 そもそも昨今は「情報」が取り沙汰されるばかりで、その一連の関連をとらえた「知識」レベルですら希薄で、さらに「知識」をベースに自分なりの考え方を形成する「思想」にまで練り上げることができなくなっており、そこまでの一連の知的な活動の方法を紹介されます。

 作家の池澤さんなので、本を中心にした知的活動を紹介されるのですが、いままで読んだ類書とは趣が異なる本の活用法が紹介されていて刺激的です。

 また池澤さんは電子書籍など最新のガジェットもそういう知的活動に積極的に取り入れられていて、それそれの特色を活かした使用法をされているのが印象的です。

 それも確固たる「思想」があるからこそ、手段に左右されない知的活動が可能なのでしょう。

 

 

杉山愛の“ウィッシュリスト100”/杉山愛

 

杉山愛の“ウィッシュリスト100” 願いを叶える、笑顔になる方法

杉山愛の“ウィッシュリスト100” 願いを叶える、笑顔になる方法

 

 

 元プロテニスプレイヤーでダブルスでは世界1位にまで上り詰めた杉山愛さんによる「自己啓発本」です。

 杉山さんは引退後“燃え尽き症候群”的な状態になり、何をしていいのかわからなくなってしまったようですが、そんな時にやりたいことを書き連ねた結果、“やる気”を取り戻し、どんどんと100項目も書かれた“ウィッシュリスト”に書かれた夢を叶えて行ったということでこの本を書かれることになったようです。

 夢や目標を書き出してなんていうと、スレッカラシの自己啓発本ジャンキーたちは冷たい視線を投げかけてしまいそうなほど“ありがち”なモノですが、注目すべきは杉山さんの取組への姿勢です。

 特にツラかったという不妊治療において、妊婦さんのお腹を写した写真を入手して、自身の写真を重ね合わせて妊娠したイメージを刷り込んだということで、それだけの強い意志があったからこそテニスでの成功があったんでしょうし、次々と“夢”を叶えていけたんだろうな、ということで“ウィッシュリスト”そのものもさることながら、杉山さんの姿勢に学ぶところの多い本です。

 

仕事なんか生きがいにするな/泉谷閑示

 

 

 精神科医の方が書かれた「生きがい」論です。

 先日紹介した『キャリアポルノは人生の無駄だ』にも通じるのですが、貨幣経済の進展によって労働が“義務”的になっていく過程で「自分探し=適職探し」みたいな風潮になっているようですが、仕事の充実が必ずしも精神の充実につながるワケではなく、そういうところにジレンマを感じて精神を病んでしまう人が少なからずおられるようです。

 そもそも「生きがい」というか精神が充実した状態と言うのは魂が震えるとか無上の喜びを感じるといった状態を指すようですが、必ずしも仕事においてのことではないんじゃないか(むしろ、そうでないことが多いんではないか?)ということみたいです。

 このあたりが労働の“義務感”と相まって、ワタクシ共の多くが誤解しがちなワケですが、今日の充実感無くして将来設計なんて本末転倒なんじゃないか?と指摘されます。

 モチロン怠惰に流されるのは論外ですが、そういう“喜び”を得るために仕事で糧を得るという部分もあるので、仕事を自己目的化してしまうのはどうなんでしょう?ということなんでしょうか…?