ワールドカップがもっと楽しめるサッカー中継の舞台裏/村社淳

 

 

 フジテレビでサッカー中継を手掛けられている方が語るサッカー中継の“裏側”です。

 この方、まだサッカーがマイナー競技だった1980年代からサッカーのテレビ中継を手掛けられていたと言うことで、その頃は如何に一般の視聴者にサッカー中継を受け入れてもらうかということで、ゲストのキャスティングや解説の内容などに工夫を凝らされてきたことを紹介されます。

 次第に日本でもサッカーがメジャーになるとともに、世界においてサッカーが巨万の富を生み出すようになって、サッカー中継のクオリティが上がっていく反面、制約も多くなって、それはそれで苦労されていることを明かされます。

 サッカー中継で過剰な演出を非難する声をよく耳にしますが、苦労しつつサッカー中継を届けてくれているんだなあ、と思うと、ちょっと控えないと…と感じます。

 でももうちょっと静かにサッカーを見させて欲しいなと思うことも偽らざるところなのですが…

 

キャバ嬢の社会学/北条かや

 

キャバ嬢の社会学 (星海社新書)

キャバ嬢の社会学 (星海社新書)

 

 

 「女性」を売りモノにすることにすることに葛藤を感じていた社会学を先行していた著者が、キャバ嬢や風俗嬢への非難のコメントを先輩にしたところ、「それって見下しているだけじゃないの!?」といったことを言われたのをキッカケに、キャバ嬢を体験してみようということで、それを元に書かれた本です。

 ワタクシはフーゾク関係は疎いのでアレなのですが、割とキャバクラってキャバ嬢が近くに座っていることもあって、特に初心者の人は「勘違い」してしまう人が多いようなのですが、ただそれをあからさまに拒絶してしまうと「商売」にならないという側面もあるので、その辺のビミョーな距離感を保つのに苦労されているようです。

 でも、男の子にオゴッてもらったり、何かを買ってもらうのも自分の「女性」を「おカネ」に変えているという部分については、何らキャバ嬢を始めとする風俗嬢と変わりはないんじゃないか、という葛藤を抱くようになったりと、葛藤の多い取組ではあったようなのですが、そういう抽象化に至っている部分を見出せるというところに、この取り組みに一定の価値があったのかな、という気も無きにしも非ずですが、やはりまだ女性にとっては行きにくい部分が残る日本社会なのかも知れないと感じます。

 

IT企業という怪物/今野晴貴、常見陽平

 

 

 「ブラック企業」の今野さんが「自分探し」の常見さんとIT企業を追います。

 ブラック企業が取り沙汰されるようになった頃、何でIT企業のことが出てこないんだろうなぁ…とIT企業に勤務しているワタクシなどは思っていたのですが、元々この言葉はIT業界から出てきたようです。

 今やIT業界の「ブラック」さは白日の下に晒されていますが、今だに「意識高い系」の学生たちの中ではIT業界を志向する人が多いようで、そういった学生たちを食いモノにする「ブラック」IT企業のやり口を露わにします。

 最近はカタチだけ時短、時短と言いますが、構造的に「働き方」を変えて行かないと、好転するのは難しいじゃないか、と内部にいるワタクシは感じますが…

 

沖縄は未来をどう生きるか/大田昌秀×佐藤優

 

沖縄は未来をどう生きるか

沖縄は未来をどう生きるか

 

 

 「知の怪人」佐藤優さんは著書の中で沖縄の新聞を購読していることを明かすなど、沖縄に並々ならぬ関心を寄せていることを明らかにしていますが、その佐藤さんが大田元沖縄県知事と対談した本です。

 実は佐藤さんのお母さんと大田さんは旧知の仲だということで、佐藤さんご自身も古くから大田さんと知己があったということです。

 そのお二方が沖縄のこれまでとこれからを語られるワケですが、一般的な「内地人(沖縄の人が本土の人のことを指す言葉)」には驚愕の事実が満載です。

 戦後の情勢によっては沖縄が独立国となった可能性がかなり高かったということや、今なお外務省が沖縄に事務所を置いていて暗号を用いた通信をしていることや、沖縄戦の直前に県知事や市長たちが逃げ出していたこととか…

 結局押しなべて言えば「内地人」少なくとも日本の政治家・官僚は、明治政府が沖縄を日本に編入してから、第二次世界大戦を経て現在に至るまで、日本だと思っていないフシがあるということを、お二人のお話を聞いてヒシヒシと感じます。

 だから沖縄戦での犠牲にしろ、今に至るまでの米軍基地の負担にしろ、非人道的なことを押し付けて平然としていられるんだな、と腑に落ちた気がしました。

 スコットランド独立の住民投票カタルーニャでの独立運動などを契機に沖縄でも独立の動きが取り沙汰されるようになっていますが、多くの「内地人」はそういうことを絵空事に近いモノと思っているはずですが、そうではないことが、この本を読むとよくわかります。

 

鉄道復権/宇都宮浄人

 

鉄道復権―自動車社会からの「大逆流」 (新潮選書)

鉄道復権―自動車社会からの「大逆流」 (新潮選書)

 

 

 先日紹介した藻谷浩介さんの『藻谷浩介対話集 しなやかな日本列島のつくりかた
の中で、赤字鉄道の安易な廃止に警鐘を鳴らされていた宇都宮さんの著書を手に取ってみました。

 この本は、日本を中心とした鉄道の発展の変遷をたどると共に、ごく最近の世界における鉄道のトレンドを紹介されます。

 ワタクシが「鉄ちゃん」だった35年位前は、飛行機による旅客輸送の増大とトラックによる貨物輸送の増大に押されて、鉄道の優位性が急激に低下していき、どんどんと赤字のローカル線が廃止になって行くという寂しい時期だったのですが、昨今ではむしろ環境に配慮しした交通手段ということで、むしろ押し返し気味であるようです。

 鉄道の発展史の中で紹介されていたことで「鉄ちゃん」だったワタクシも知らなかったのが、私鉄がここまで発展しているのは日本だけで、海外ではかなり限られた状況でしか存在しないようで、ましてや私鉄が不動産業も兼ねて都市開発の役割も行って、自身で乗客を作り出す機能を担っているような例はありえないようです。

 特に最近のトレンドで、地方都市における空洞化を解消する有効な手段として、LRT(Light Rail Tram)という路面電車リバイバルが、老人などの交通弱者の救済の手段となっているだけではなく、渋滞解消にも役立っているということで、日本でも富山市で活用されているのですが、新しい都市開発の重要な要素として、鉄道が新たな役割を担いつつあるのはうれしいことですね。

 

 

分断社会を終わらせる/井出英策、古市将人、宮崎雅人

 

分断社会を終わらせる:「だれもが受益者」という財政戦略 (筑摩選書)

分断社会を終わらせる:「だれもが受益者」という財政戦略 (筑摩選書)

 

 

 先日、井手先生が参加している、佐藤優さんや民政党の前原さんとの対談本の『分断社会ニッポン』が、この本をベースの話されているということだったので、手に取ってみました。

 『分断社会ニッポン』では、格差の拡大が取り沙汰されていましたが、そこでも触れられていたように格差の固定化といった事態がより問題の深刻化を招いているようで、この本では格差の結果生じた、各層の間の軋轢があることを指摘されます。

 というのも、下層が「支援」を受けることについて、上層が自分たちの税金を使って「特権」を受けることにナットクが行かないという、何とも世知辛い反応を示しているということで、トランプ大統領就任後のアメリカ社会における「分断」が社会問題となっていることが報道されていますが、日本ではもっとセコイと言うか情けない理由で社会の分断が進んでいるようです。
 
 その辺り、社会全体において公平感が持てるような…ということでの提言もあるのですが、金持ちの心持ちが情けなくって…

 

世界史の極意/佐藤優

 

世界史の極意 (NHK出版新書)

世界史の極意 (NHK出版新書)

 

 

 先日『資本主義の極意 明治維新から世界恐慌へ』を紹介しましたが、こちらの続編みたいだったので、手に取ってみました。

 冒頭で歴史を学ぶ意義を語られていますが、その重要な要素として「戦争を阻止すること」を挙げられます。

 冷戦終結以降、戦争が少なくなる方向に向かうのかな…と思いきや、あちこちで紛争が続き、昨今では帝国主義的な傾向が復活してきているなど、第三次世界大戦の勃発の可能性すらささやかれるようになっています。

 そんな中で歴史を学ぶことの意義は大きいということなのですが、それはただ単に通史を見ておくということではなく、「アナロジカル(分析的)」に学ぶことが必要だということです。

 というのもすべての国において、その国で広められる「歴史」というのは、時の為政者が、そういう風に認識して欲しいというカタチで彩られるもので、強く為政者の主観を反映しているワケですが、その辺りは日本の歴史観と中国や韓国の歴史観の違いを見れば明らかでしょう…

 だからこそ色んな歴史の見方があるんだということを認識した上で、この事象をこういう風に見るんだということを理解することが重要だとおっしゃいます。

 その上で過去から戦争の誘因となってきた民族問題と宗教問題についてのアナロジカルな通史の見方を紹介されます。

 中国の肥大化、イギリスのEU離脱、アメリカのトランプ大統領就任や北朝鮮の凶行など、そういう観点で見れば相当キナ臭いよなぁ…と感じますよね…そういうことが大事なようです。