野球小僧の戦後史/ビートたけし

 

野球小僧の戦後史――国民のスポーツからニッポンが見える

野球小僧の戦後史――国民のスポーツからニッポンが見える

 

 

 ビートたけしさんがご自身の半生と戦後史を野球を手掛かりにして語られます。

 たけしさんはワタクシより2世代ほど上になりますが、その頃の娯楽って見る方にしても、する方にしても野球が堂々たる王座にあったことは間違いないようで、原っぱでの草野球とか、長嶋、川上といった名選手の系譜を懐かしく読みました。

 最近でこそ娯楽全般に限らず、スポーツも選択肢が大幅に広がって、野球が世相を代表する場面も少なくはなってきましたが、かつては世の中の動きや、そこに生きていた人たちの考え方にも大きな影響があったんだなあ、ということを改めて思い起こさせられます。

 たけしさんの軽妙な筆勢に、軽く読めますが、非常に深い戦後風俗史ともいえる内容になっているんじゃないかと思います。

 

橋をかける/美智子

 

橋をかける (文春文庫)

橋をかける (文春文庫)

 

 

 皇后陛下美智子様が1998年にインド・ニューデリーで開催された国際児童図書評議会(IBBY)の世界大会の基調講演として寄せられたビデオメッセージを元に作られた本です。

 先日、出口さんが書かれた『教養は児童書で学べ (光文社新書)』でこの本のことが紹介されていて「最高の読書論」として激賞しておられたのを見て、手に取ってみたのですが、子供が本を読むことを通して学ぶことについて語られます。

 副題に『子供時代の読書の思い出』とありますが、美智子様がご幼少の時に読まれた、日本武尊と后の弟橘比売命の物語を紹介されているのですが、日本武尊を助けるために弟橘比売命が「いけにえ」となるエピソードを読まれて、随分と考え込まれたということです。

 『教養は児童書に学べ』でも児童書が将来に子供が直面するであろう苦難を受け入れる準備を整えることになるとおっしゃられていましたが、美智子様も「悲しみの多いこの世を子供が生き続けるためには、悲しみに耐える心が養われると共に、喜びを敏感に感じ取る心、又、喜びに向かって伸びようとする心が養われることが大切だと思います。」と子供にとっての読書の意義を語られています。

 美智子様は児童書の普及についての活動にかなり熱心に取組まれているということですが、ご多忙な中でそうされるのも、こういう意義を深く心に刻まれているからなんでしょうね。

 小さなお子さんを持つ親御さんには是非とも
一読をお願いしたい本です。

 

壁を超える/川口能活

 

壁を超える (角川新書)

壁を超える (角川新書)

 

 

 長きにわたり日本代表を支えた守護神・川口能活さんの回顧録です。

 同じ話が何度も出てきたり、時系列的に行ったり来たりするなど、構成もへったくれもあったもんではないですが、それだけに赤裸々に川口選手のナマの声が聞けたような気がする内容になっています。

 傍目から見ても輝かしい経歴を誇る川口選手ですが、この本を読んでいるとあれが悔しいとか挫折に関する記述が多くて、この本の中で、「失敗は忘れる」とおっしゃっている割には、うれしかったことよりも悔しかったことの記憶の方が鮮明なようです。

 ということもあってか、ファンとしてはその時の心理を振り返って欲しかった、アトランタ五輪のブラジル戦の勝利のことや中国でのアジアカップの際の鬼気迫るPK阻止連発のことへの記述は素っ気ない位です。

 なんかそういうところも川口選手らしいなあと思うのですが、どなたかもう少しそういう所にフォーカスした本を作ってくれませんかね!?

 

新装版台湾人と日本精神/蔡焜燦

 

新装版 台湾人と日本精神: 日本人よ胸を張りなさい

新装版 台湾人と日本精神: 日本人よ胸を張りなさい

 

 

 司馬遼太郎さんの『街道をゆく』シリーズの『街道をゆく 台湾紀行』でも案内役として登場した“愛日家”蔡焜燦さんがご自身の半生と日本と台湾の関わりについて語られます。

 よく同じく日本に占領されていた韓国と台湾の日本への友好感の差が言われますが、この本を読むとなぜそうなるのかよくわかります。

 元々台湾人というのは中国の福建省から来た人が多くて、日本が統治する以前は清が統治していたとはいうものの、台湾人自身の中国への帰属意識はなく、寧ろ蒋介石の国民党政府が台湾を統治し始めてからの印象が悪く、日本統治時代の手厚い施策をなつかしむ人は多いようです。

 当時の日本の国家予算の大きな部分を費やしてのインフラ整備もそうなんですが、日本が台湾で施した教育が台湾人の考え方の重要な部分を構成しているようです。

 特に「公」の意識というのが、その後統治することになる中国人との大きな差で、蔡さんはそういう「日本精神」を台湾に根付かせてくれたことに感謝を表明される共に、日本人にもそういう部分に誇りを持って欲しいとおっしゃいます。

 最近、台湾が旅行先として人気を集めていますが、こういうことを知った上で訪れると、もっと親近感がわくのかもしれません。

 司馬さんの『街道をゆく 台湾紀行』も読んでみようかと思います。

 

難しいことはわかりませんが、英語が話せる方法を教えてください!/スティーブ・ソレイシイ、大橋弘祐

 

難しいことはわかりませんが、英語が話せる方法を教えてください!

難しいことはわかりませんが、英語が話せる方法を教えてください!

 

 

 編集者の方がシロウトを装って専門家にノウハウを教えてもらう『難しいことはわかりませんが』シリーズ第三弾は「英語の話し方」です。

 今回の“専門家”はNHKの語学番組でもホストを務められていて、日本でも20年近くの英語教育の経験を持つスティーブ・ソレイシイさんです。

 スティーブさんは元々日本に来られたばかりの頃は英語を教える仕事をずっと続けるつもりは無かったのですが、日本の英語教育のあまりのヒドさに“スイッチ”が入って、未だに英語教育に従事されているということです。

 で、スティーブさんがおっしゃる「英語を話す」ための要諦としては、

  ・汎用性の高い便利な「決まり文句」を多用する
  ・短い文章で話す
  ・「オハコ」を準備しておく

といったカタチで話すための心理的なハードルを下げて踏むことを奨められています。

 そのための手段として、Skypeのオンライン英会話レッスンの活用で経験値を増やし、スピーキングのテストの定期的な受講でスキルの明確化を図ることなんだそうです。

 どうしても日本人は「恥」を重視してしまいがちですが、そういったところはある程度担保しつつも、「やらなければ身につかない」ということは確か何で、そこは覚悟を決めてやるしかないんでしょうねぇ…

 

アーキテクチャの生態系/濱野智史

 

 

 昨日に引き続き、池上さん&津田さん対談本の推薦図書です。

 “アーキテクチャ”って、IT業界のワタクシどもからすると、説明するまでもなく受け
入れられるコトバなのですが、それ以外の方には???かも知れません。

 と言っても、IT業界の我々もそれ以外の方に明確に説明するのが難しかったりします。

 一番ふさわしいかもしれないのが“仕組み”というコトバなのかもしれませんが、それを聞いて、IT業界意外の方にナットクしていただけるような気もしませんが…

 この本が出版された2009年時点では、昨今のSNSの主流を占めるLINEとInstagramが登場していないのですが、FacebookYouTubeなど主要なSNSは概ね出そろった時点で、様々なネット上のコミュニケーションメディアそれぞれの特性や、それぞれのメディア上におけるユーザーの振る舞いの特性などを紹介されていて、それぞれのメディア毎の関係性を“生態系”ということで分類されているようです。

 それぞれの“メディア”におけるユーザーのふるまいが、思ったよりそれぞれのメディ
アの仕様に影響されているというのが、当たり前なのかもしれませんが、ワタクシ的には意外に感じるところがあります。

 でも、必ずしもユーザーが開発者の意図通りに振る舞っているかというと、むしろそうではないことが多くて、“意外な”振る舞いが、メディアの予期せぬ不振や興隆につながっているようです。

 LINEやInstagramの“生態系”上での位置づけが気になるところではありますが、次々と
新たなメディアが登場する状況においては、あんまりそんなことを気にしても仕方がないのかも知れません。

 でも、それぞれのメディアの特性とユーザーのふるまいを知るのは、ネットのマーケティングを手掛ける方には有効なのかもしれません。

 

パブリック/ジェフ・ジャービス

 

パブリック―開かれたネットの価値を最大化せよ

パブリック―開かれたネットの価値を最大化せよ

 

 

 池上さんと津田さんのメディアに関する対談本で推薦図書として挙げられていたので手に取ってみました。

 Facebookで昔の友人とコンタクトが取れるようになったという経験をされた方も少なからずいらっしゃると思いますが、SNSなどでプライベートな情報を“パブリック”にすることによるメリットと弊害について語られた本なのですが、基本的に著者であるジェフさん自身は結構極端な“パブリック”派で、自身がガンに冒された時もその情報をオープンにして、治療に関する知見を得られたとしていますが、それについて眉をひそめる向きもあるということで、そういう論争がこの本を通してのテーマとなります。

 ワタクシ自身もFacebookを始めた当初、まだ小さかったムスメたちの写真をアップしてヨメとモメたことがありましたが、メリットとデメリットの比較というのは意外とカンタンなことではなさそうです。

 AIなども含めて情報を組み合わせたことに得られれる価値が今後どんどん増えていくこと考えると、よりこの問題が難しくなってくることが考えられますが、結局なかなか答えは出ないんでしょうねぇ…