新・リーダー論/池上彰・佐藤優

 

 

  池上さんと佐藤さんの対談本って何冊か、このブログでも紹介しているのですが、結構池上さんの分が悪いことが多いのですが、この本はトランプ大統領の就任直後ということもあり、アメリカ大統領選取材の経験が豊かな池上さんが健闘しています…っていうか、ウマく棲み分けができているという印象ですかね!?

 

 この本はトランプ大統領の当選直後と言う時期の対談になるのですが、かなり世界情勢が混沌とし始めてきた時期のモノとなっています。

 

 トランプ大統領の当選かつBrEixt確定直後で、ポピュリズムの流れが確定しつつある状況での「リーダー論」ということになっています。

 

 お二方は、そういった時代の”リーダー”の典型の源流としてフランスのサルコジ元大統領をモデルとされていて、その後、トランプ大統領だったり、元大阪府知事大阪市長の橋下氏だったり、安倍首相もその系譜に連なるということのようですが、

 

 ・思考の一貫性の欠如

 ・知的凡庸さ

 ・攻撃性

 ・金銭の魅惑への屈服

 ・愛情関係の不安定

 

という共通した特徴を指摘されています。

 

 かなりヒドイ言い方ではありますが、気の毒な部分はあって、数十年前と比べて遥かに複雑化している状況の中、求められているモノが格段に高度化している中、そういう資格がある人がいないのか、仮にいても割に合わないと思われているのか、以前よりも求められる資格に全くと言っていいほど満たされていない人たちがリーダーとなってしまうことが多いようで、昨今のコロナ禍のようなことが起こってしまうと、もたらされる災厄を考えると、状況に見合ったリーダーが出てこないと、極端な話、人類の滅亡にまでつながりかねない状況にあるようで、でもそういった期待も薄く、人類の将来はジリ貧なんじゃないかという絶望感を抱いてしまう内容の本でした…

池上彰のお金の学校

 

知らないと損する 池上彰のお金の学校 (朝日新書)

知らないと損する 池上彰のお金の学校 (朝日新書)

  • 作者:池上 彰
  • 発売日: 2011/10/13
  • メディア: 新書
 

 

 NHKで『週刊こどもニュース』を担当されていた頃から込み入ったニュースを解き解して分かり易く解説することで知られる池上さんがおカネについて語られた本です。

 

 ただ池上さんの解説って、込み入った話を解き解す分にはスゴイなと思わされるのですが、この本で扱っている内容って、大学の受験レベルで政治・経済を勉強してきた高校生なら間違いなく90%以上の内容は理解済みでしょうし、ヘタしたら公民をキッチリ勉強している中学生でも8割以上は理解できる内容となっていて、そういうある程度多くの人が知っているであろう内容であっても、割と池上さんはいつものように丁寧に解説してしまうので、一応一通り公務員試験向けに経済学を勉強したワタクシにとっては、かなりカッたるい内容でした。

 

 正直誰をターゲットにこんな本を書いたんだろう…と不思議になったのですが、あとがきで、この本を書いた年に芸術大学の学生向けに経済の講義をされていたということで、この本を書かれた時にその時の学生のことがアタマにあったのかも知れません。

 

 逆に言えば、中学校の公民レベルの経済の知識に不安がある人なんかだと、そもそも”お金”とは何なのかとか、銀行の機能はどうかという基本的なところから、割と取っつき易い内容となっているので、そういう振り返りのためにはいいのかもしれないな、とは思います。

 

 ただ、池上さんの意外な弱点を見たような気もします…

日本人の遊び場/開高健

 

 

 先日紹介した『ずばり東京』に引き続き開高さんのルポなんですが、先日は東京オリンピック前後の東京の風俗を紹介したモノだったんですが、この本はその少し前の昭和30年代半ばの日本人の娯楽を紹介した内容の本です。

 

 『ずばり東京』の時も同様の印象を受けたのですが、この本は現在から60年以上経っている時期のことを扱った内容となっているのですが、驚くほど現在との違いが少ないと感じます。

 

 ヘルスセンターとか、大阪道頓堀にあった”くいだおれ”に代表される大箱の飲食店など、既に一般的ではなくなった業態が含まれていることはモチロンなのですが、パチンコだったり、釣り堀だったり、ボウリングだったりと今なお(比較的高めの年齢層の人向けではあるものの…)人気のある娯楽なのはオドロキです。(まあ、多少位置づけは違うようには思えるんですけどね!?(笑))

 

 おまけにそういった娯楽施設での一般的な日本人の楽しみ方が、どこか普段の仕事とか学業とかが抜けきれなくて抱えたまま、多少その場の娯楽を楽しみつつも、半分は普段の生活に拘泥しているように思えるところまで、60年後の日本人もまるで進化していないんだなぁ、と思えます。

 

 この本で扱っている娯楽を楽しんでいる人たちも、どちらかというと高めの年齢層の人向けのモノが多いのでそう思うのかも知れませんが、もうちょっと日本人の娯楽も進化しないとなぁ、と思いつつも、それだけ日本人の精神の深奥に根ざした娯楽が提供されていることを感謝すべきなのか、とも思わなくもありません。

Give up/山際淳司

 

Give up オフコース・ストーリー (角川文庫)
 

 

 コロナ禍の引き籠もり状態になってから、沢木耕太郎さんだったり、開高健さんだったりと、学生時代から社会人になったばかりの頃に読んでいた本を引っ張り出して、オフコース甲斐バンドなどといった、その頃に聞いていた音楽を聴きながら読んでいたのですが、Number関連の本を紹介しながらオフコースを聴いていて、そう言えば『江夏の21球』の山際さんがオフコースの本を書いていたなあと思いだして、結構プレミアがついて高くなっていたのですが、Amazonの中古本を取り寄せて読んでみました。(Kindleで読めば安くあがるのですが、未だに端末で本を読むということに慣れられない、アナログなじいさんでした…)

 

 この本は、1982年に初めて日本武道館で10日間のコンサートを行っていた時期に、実はその裏側で、オフコースは解散に向けての葛藤の下にあったことを紹介された内容の本となっています。

 

 ワタクシ自身、その時期からオフコースを聴き始めたのですが、『さよなら』のヒット後、『We are』『over』という日本の音楽史上に残る名作アルバムを作りつつ、主要メンバーであった鈴木康博さんが脱退の意向を示し、長らく活動を共にしてきた小田和正さんが、鈴木さん無きオフコースはあり得ないということで、解散の意向を示していて、1982年の武道館ライブを最後に解散をしようということで準備を進められていて、そのドキュメンタリーとなっています。

 

 鈴木さんが脱退の意志を示されたということなのですが、だからといって感情的なもつれたあったわけでもなく、そういった話があってからも『We are』『over』という名作を作り上げる結束を見せ、さらには10日間の武道館ライブを成功させるという成果もあげるなど、音楽的にも人間関係的にも成熟したところを見せていて、結局その後、オフコースは解散することなく、鈴木さんを除いた4人で活動され、鈴木さん自身もソロとなって活動される訳ですが、双方ともオフコース時代のような際立った成果を残すこともなかったことは残念なところですし、音楽の難しいところを思い知らされますが、こういった素晴らしい音楽を残してくれたことに感謝するべきなんでしょうね…

ホームレス中学生/田村裕

 

ホームレス中学生

ホームレス中学生

  • 作者:麒麟・田村裕
  • 発売日: 2007/08/31
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

2007年のベストセラーとなった、お笑いコンビ麒麟の田村さんの著書ですが、次女が読んでたのを見て手に取ってみました。

 

 実話らしいのですが、1990年代前半に起こったとは思えない壮絶なモノで、当時中学生だった田村さんが、実のお父さんから一家離散を宣言されて、短期間ではあったようなのですが、中学生であったにも関わらず、独力で講演で生活されていた経験をベースにした自伝です。

 

 ちょっと聞いただけでも壮絶な体験ですが、ご本人のキャラ故なのか、起こったことは起こったこととしてプレーンに描かれていて、実の父親に保護を放棄されて、兄や姉からの支援も一旦断って独力で生活しようとすることそれ自体は相当壮絶な体験なのですが、本人の人徳なんでしょうけど、その都度、冷静に考えるとかなり常軌を逸したレベルの支援を得られることができて、結局麒麟として相方の川島さんとデビューされるまでを紹介されています。

 

 1990年代前半に、こういった経験をされるということ自体も信じられない体験ではあるんですが、このご時世にそういった境遇の中学生を引き取って世話をしようとする友人の親御さんや、自分がガマンしてでも弟に思ったように過ごしてほしいと支援するお兄さんとか、まだまだ日本人の利他の精神もあるところにはあるんだなぁ、とちょっとホロッとさせられます。

 

 いざという時に、この本に出てくる人たちのようなことができるんだろうかと思うのですが、そこまではできないとしても何らかの支援ができるような人でありたいとは思いますが…

旅のつばくろ/沢木耕太郎

 

旅のつばくろ

旅のつばくろ

 

 

 沢木耕太郎さんの本を色々読み返していたら、最新刊が出版されていることを知って、手に取ってみました。

 

 沢木さんの国内旅行の本だということで盛んにプロモーションをされているようですが、それはただ単に『深夜特急』の印象の強い沢木さんの本は、「旅」を冠した方が売れやすいからであって、旅となっているのはホンのキッカケであって、エッセイ集と言った方が相応しいかも知れません。

 

 だからといって「旅」を期待して手に取って肩透かしを食らうといったモノでもなく、沢木さんの軽やかな旅のスタイルは健在です。

 

 国内であっても、旅となるとケチになってしまう沢木さんの長年染みついた性癖は抜けようがなさそうですし、目の前のことを面白がることによって旅を充実させるという旅のスキルは、ちょっとしたお出かけであっても健在で、ホンの偶然の出会いであっても生涯思い返すようなことに出会ってしまうようなことは、沢木さんの「旅」の真骨頂なのかも知れません。

 

 この本はJR東日本が発行している「トランヴェール」という雑誌に連載された文章なんで、ムリにでも「旅」を前面に押し出さざるを得ないところもあるでしょうし、“旅先”も東日本に偏ってはいますが、ホンのちょっとした”旅”を楽しむための”技術”は却ってこういう身近な”旅”で提示してもらってこそ、フツーの人たちには理解しやすいんじゃないでしょうか!?

ずばり東京/開高健

 

ずばり東京 (文春文庫 (127‐6))

ずばり東京 (文春文庫 (127‐6))

 

 

 開高健さんは抑うつ的な症状が時折あって、執筆ができなくなってしまうことがしばしばあったとのことですが、作家の武田泰淳さんに勧められて、小説を書けなくなった時にルポルタージュを手がけられていたということで、そのうちの1冊がこの本です。

 

 この本は1964年のオリンピック直前の東京の風俗というか、世相と言うか、当時の東京を様々な角度から捉えたルポが40編あまり掲載されているのですが、多少高尚な世界も紹介されているのですが、開高さんの嗜好からか、どちらかというと底辺に近い所のモノが多くなっています。

 

 モチロン60年近く前の状況を追っているだけに、流しだったり歌声喫茶だったり、もはや存在しないモノも数多くあるのですが、特に鋼材を拾って生活をしていた集団を追った名作『日本三文オペラ (新潮文庫)』でも題材にされたような、底辺の生活を扱ったモノでは、それなりに全体としては当時とは比較にならない位の経済的な発展を遂げた現在の日本においても、それほど変わらない状況なんじゃないかと思わされます。

 

 特に風俗関連のモノを扱った章なんかでは、セイフティネットの外にある女性たちの苦境はそんなに変わらないように思えます。

 

 最後の方で、東京オリンピック開会式にレポートでクライマックスを迎えますが、来年無事オリンピックが開かれたとして、やはり1964年とそんなに変わらない状況が展開されるんでしょうか!?