自衛隊の闇組織/石井暁

 

 

 この本2018年の出版なのですが、昨年書店で平積みしてあったのが気になって、手に取ってみました。

 

 作者は共同通信の記者で、自衛隊内に非公式の諜報組織があることを知って長らく取材を重ねられてきて、一時は生命の危機をほのめかすような取材の中断要請もあるなど、かなり緊迫した取材だったようですが、無事日の目を見て報道されるまでの過程を紹介した内容になっています。

 

 「脅迫」された直後には”知の怪人”佐藤優にも相談されたようで、諜報活動に長けた佐藤さんは、「電車を待っているとき、決してホームの一番前には立つな!」という背筋の凍るような「忠告」をされたようです。

 

 そういった諜報機関はかなり昔からあったようですが、その存在を知る人は自衛隊の幹部クラスでもかなり限られた人の身だったということで、当然総理大臣や防衛大臣もその存在を知らなかったということで、シビリアンコントロールの原則を覆す存在だということで、かなり大きな問題をはらむ組織であり、身の危険にさらされながらもジャーナリストの良心に従って、初心を貫かれたようです。

 

 その組織というのは陸上自衛隊に関連する組織だったということで、諜報のための要員を育成していたことで知られる陸軍中野学校の系譜をひく組織らしく、やはり陸軍の「暴走」の伝統もしっかりと受け継いでいたのは、笑えないところです。

 

 もともと石井さんは、自衛隊の幹部クラスに個人的に酒を酌み交わす仲の方が多かったということで、そういった人脈を辿って、報道に至るまでの裏付けも重ねていかれたようですが、個人的な会話の中から「別班」のことを切り出されるところの緊張感は、ウォータゲート事件を報道した際のワシントンポスト紙のウッドワード、バーンスタイン両記者のエピソードを思い起こさせるヒリヒリしたモノでした。

 

 最近はメディアの権力ベッタリの姿勢ばかりが目につきますが、こういった圧力に負けないホンモノのジャーナリズムが未だに息づいていることを知って、心底安堵させられる想いでした…