人生ってなんだ/鴻上尚史

 

 

 これまで『世間ってなんだ』『人間ってなんだ』と紹介してきた週刊『SPA!』の27年間にわたる連載「ドン・キホーテのピアス」のうちそれぞれのテーマに合ったエッセイを集めた3部作も無事全巻紹介となります。

 

 今回は「人生」ということもあって、これまで紹介した2作にも増して深淵なお話をされているように感じます。

 

 また、「人生」を切り取る演劇ということなのか、鴻上さんの本職である演劇に関するエッセイが多いのも特徴と言えるかもしれません。

 

 冒頭で鴻上さんが『AERA』で連載されている『ほがらか人生相談』を手掛けられるようになった経緯を紹介されているのですが、鴻上さんは舞台の演出をされているということもあって、舞台公演を続けていく上で、公演中に俳優同士がモメたり、突然辞めたいといってきたりと、公演継続の危機につながるような相談を持ち掛けられることが多いそうなのですが、何とか公演を千秋楽まで続けられるように相談を持ち掛けてきた相手を何とかナットクさせるという経験を重ねてこられたということもあって、そういったスキルに長けざるを得なかったということを紹介されています。

 

 また、1章を設けて「親と故郷」ということで、ご自身のご両親との関係性について語られているのですが、その中で年末年始に帰郷して、両親がどういう人生を歩んできたのかを聞いておかなければ、ということに再三言及されているのですが、なかなかできない…ともおっしゃられています。

 

 確かにそういうことって大事なんだろうな、とはワタクシも思うのですが、きっとワタクシも鴻上さん同様、こっ恥ずかしくてできないんだろうなぁ…とも思います。

 

 若い劇団員や、ワークショップに赴かれた際に学生からの人生相談も受ける機会があるということにも触れられていて、そういうご経験がふんだんに反映された、誰もがどこか何か感じるところがあるモノなんじゃないかと思います。