人間ってなんだ/鴻上尚史

 

 

 先日、『世間ってなんだ』を紹介しましたが、三部作の一作目である本作を紹介します。

 

 そもそも週刊『SPA!』での27年にわたる連載「ドン・キホーテのピアス」を書籍化する際に、ベストセレクションを出版しようという企画だったようなのですが、1冊には収まらず、主要なテーマごとに3冊出版しようということになったようで、「人生」をテーマにしたものが第一弾として出版されたということだそうです。

 

 「人生」というとザックリしているので、まあ、割とその中でも細かく分けるといろんな要素が含まれているワケですが、なかなかに深淵なトピックが目白押しです。

 

 冒頭で「シンパシー(同情心)」と「エンパシー(相手の立場に立てる脳力)」の違いについて語られていて、人生においては決して同意はできないけれども、相手がこういう風に考えているんだろうなぁ、ということを慮ることが、時に非常に重要なスキルとなることを示唆されています。

 

 例えば、ソウルオリンピック開催時に韓国の犬食が西欧諸国から問題視された際に、なぜ牛や豚を食べるのが良くて、犬がダメなんだ!?ということについて、西欧はついついナチュラルに優生思想的な考えが浮かびがちなようで、犬はアタマがいいからなんて言っているのに対して、じゃあバカなら殺してもいいのか!?と反論して絶句させるといいた哲学なトピックも数多く所載されています。

 

 かと思えば、少年期にあこがれた美人がいて、田舎にいたということでひょんなことから、その美人のウンコを見てしまい、女の人に対して過度な幻想を抱かなくなったことがのちの生涯のメリットになったという、ちょっと下世話なトピックもあります。

 

 といった風に、人生カッコつけてばかりもいられないですし、下賤でばかりもいられないということで、清濁併せ呑むということが人生を豊かにするということを体現されているようなエッセイで、この本を読むと人生に深みが増すかもしれませんよ!?(笑)