日本の女が好きである。/井上章一

 

 

 まあ何と言うか、ストレートなタイトルの本ですが、こちら『京都ぎらい』で一躍名を馳せた井上章一さんが語る「美人論」についての本です。

 

 井上さんというと最近紹介した『歴史のミカタ』でも触れられていたように、国際日本文化研究センターの所長を務められていて、昨今人気の歴史研究家である磯田道史さんを部下にお持ちだということですが、ご自身も本職は建築史の研究家でありながら、『京都ぎらい』の続編に『京都ぎらい 官能篇』という著書があることでもわかるように性愛に関する歴史の研究家でもあるということで、美人論といっても歴史的な経緯も踏まえた「美人論」だということのようです。

 

 この本自体は2007年に出版された本で、「PHPカラット」という雑誌の連載をまとめた本だということなのですが、15年以上前に連載されていた時点で、「ブスをブスと言って何が悪い」という、つかこうへい作の『熱海殺人事件』の中のセリフを取り上げながら、こういうジェンダー論を語ることが難しくなっていることを嘆かれていますが、多くの自己啓発書を手掛けるPHP出版がこういう本を手掛けることは今後絶無だろうなぁ、と思わせるほど、今の目から見ると過激なモノとなっています。

 

 例えば、女学校というとかつては、始終授業参観があって、それも親が見に来るワケではなく、地域の名士が自分の息子の嫁の品定めにくると言う具合で、見初められた尻から結婚のために学校を辞めていくということで、女学校を卒業するということは不美人の証で、更に進学して教師になろうなんていうと…という今や放送禁止にもなりかねないようなトピックが目白押しで、そのヤバさに笑えます。

 

 とは言いながら、それでも美人が得をする、という明治時代の研究が紹介されていて、いくら女性の活躍の場が広がって行ったとしても、それはそれで美人の方がトクをするというのが、不条理ながらも真実を捉えているようで、興味深い所です。

 

 それにしても、時代を感じながらどこか痛快さを感じるワタクシはやはり昭和なオトコなのかも知れない…と改めて自覚させられた次第でした。