京都ぎらい/井上章一

 

京都ぎらい (朝日新書)

京都ぎらい (朝日新書)

 

 

 ようやく『京都ぎらい』にたどりつきました。

 この本、読んでみるとかなりタイトルが先行してしまっているところが多いなぁ、と思うところが多い内容でした。

 井上さん自身、嵯峨という、京都の中心地から外れたところに住んでいたこともあって、洛中という、京都の中心地の出身者に少なからずコンプレックスを抱いていて、京都以外の人に、井上さんご自身が“京都人”扱いされることに違和感を感じられていたことを告白されています。

 まあ言ってみれば“中華思想”的なおハナシだとは思うのですが、余所者からみればリッパな京都人である井上さんを、郊外だということで、ナチュラルに蔑んでしまう洛中人と、悔しいながらもそれを受け入れてしまう、洛外人たる井上さんの葛藤を語られています。

 確かに伝統にはそういう犠牲が必要なのかもしれませんが、なかなか理不尽な犠牲が、陰に隠れているんだな、と感じざるを得ない内容でした。