日本史のミカタ/井上章一、本郷和人

 

 

 以前、『京都ぎらい』で知られる井上章一さんが、ご自身が所長を勤められている日本文化研究センターに所属し『武士の家計簿』などでも知られる磯田道史さんとの共著『歴史のミカタ』を紹介しましたが、今回はその続編で日本史にフォーカスしたモノだとなっていて、今回のお相手は『日本史のツボ』などの著書で知られる本郷和人さんです。

 

 神話の時代から明治維新に至るまでの日本の歴史について、少し通説とは異なる観点から眺めたような趣きになっており、ご自身も少し主流とは離れた位置にいると自認されている本郷さんが、建築史や性愛に関する歴史など周辺から通史を眺めているといえる井上さんに史観をぶつけるといった感じになっています。

 

 ということで、かなりユニークな解釈が次々と出てきて、明治維新ブルジョア革命だったとか、天皇の権威の源泉は京都のおねえちゃんだったんじゃないかという『日本の女が好きである。』など性愛についての著書でしられる井上さんらしい説も飛び出したりします。

 

 全体を通して繰り返し語られていることでちょっと意外だったのが、司馬遼太郎さんが幕末になって初めて「日本人」という国民という意識が芽生えたとおっしゃっているのに対して、お二方はかなり以前に潜在的に「日本人」としての意識を持っていたんじゃないかということに言及されており、古くは遣隋使の派遣や白村江の戦い元寇足利義満日明貿易鎖国を経ての開国に至るまで、そこかしこにそういう意識の傍証があるということを指摘されています。

 

 最近は歴史に関してかなりバラエティーに富んだ観点が提示されるようになっており、教科書的な歴史観に拘泥するのではなく、いろんな観点を見て見ることでより歴史が楽しめるのではないかと、こういう本を読んでいてより強く感じさせられました。