日本史のツボ/本郷和人

 

日本史のツボ (文春新書)

日本史のツボ (文春新書)

 

 

 中世日本史を専門とする方が、7つのトピックを手がかかりにして日本史の流れを見て見ようという趣旨の本です。

 あとがきでおっしゃっていますが、日本史の研究者の世界では“狭く深く”というのが尊重されるそうで、日本史の研究者がこういう本を書くのは“邪道”なんだそうですが、昨今こういう風に日本史をマクロの視点でとらえる本が増えてきていて、個人的には大歓迎です。

 この本では、天皇、宗教、土地、軍事、地域、女性、経済という7つのテーマで歴史の流れを辿るワケですが、どのテーマも日本史のダイナミズムを知る上で、かなり重要なんだなということが伺えます。

 個人的に一番印象的だったのが「土地」に関する言及で、それについて荘園がどうのこうのという形式論ではなくて、土地をどういう風に支配するかということで、次第に「所有権」の概念が浸透していく様子と、それに従って政権が変遷していく様子を紹介されます。

 また鎌倉幕府が崩壊した後に室町幕府が京都に拠点をおいた理由ということで、関東という“僻地”に位置した鎌倉幕府貨幣経済の進展に対応できずに崩壊していったことを見た足利家が、貨幣経済の先進地である畿内に拠点をおいたこととか、それぞれのテーマが歴史を動かす“軸”となっている様子が、とても分かりやすく紹介されます。

 “邪道”なのかも知れませんが、本郷さんには今後とも、是非こういう路線を突っ走ってもらいたいところです。