対決!日本史 戦国から鎖国篇/安部龍太郎、佐藤優

 

 

 ”知の怪人”佐藤優さんが、歴史小説家の安部龍太郎さんと日本史について語られるというので手に取ってみました。

 

 佐藤さんはかねてから、日本史を世界史と切り離して教育することについての弊害を語られているのですが、この本では大きな歴史の流れを把握する上での弊害を具体的に語られています。

 

 この本がカバーしている範囲は概ね鉄砲伝来から鎖国までなのですが、その辺りの歴史に流れは、世界史の潮流の中で考えないと、それぞれの事件の歴史的な意義をキチンと認識しにくいのではないかということを指摘されています。

 

 特に鉄砲伝来については教科書に出てくる感じだとかなりの唐突感があって、偶然漂流した船に鉄砲が積んであったという印象を受けかねないのですが、お二方によるとあくまでも大航海時代の一環として、日本国内の応仁の乱後の戦乱が広がる中で鉄砲を積極的に輸出し、あわよくば植民地としての支配も視野に入れた上での渡航だったと考えるべきだとおっしゃっていて、その後豊臣政権下のキリシタン大名に取り入っての事実上の教会領を形成するところを見ると明らかだと指摘されます。

 

 鉄砲伝来以降、戦国時代の戦乱の中で鉄砲及び弾薬の調達のために、織田政権・豊臣政権下では盛んに貿易が行われて大航海時代重商主義的な傾向が強くなっていたのに対し、徳川政権下ではその反動もあって、農本主義的な体制となるワケですが、重商主義的な体制の中で格差が拡大していたのに対し、農本主義的な体制下では、その格差が是正されていくということで、その状況というのは過度のグローバリズムに疲弊していた日本がコロナ禍を契機として、内向きの思考になるんじゃないかということを示唆されているのが興味深い所ではあります。

 

 そういうかなりマクロな視点での歴史のミカタというのは、多くの人にとってあまりなじみがないかも知れませんが、そうすることで見えてくることも多そうだということで、明治維新を取り上げるという続編も手に取ってみたいと思います。