昨日に引き続き”知の怪人”佐藤優さんの日本史対談本ですが、コチラ昨日の『戦国から鎖国篇』の続編ではあるようなのですが、カバーする範囲は少し時代が開いて幕末からになるということです。
昨日の『戦国から鎖国篇』で、織豊時代の重商主義から徳川体制になって農本主義に移行し、そのおかげもあって260年もの平和な時代となったことに触れられていましたが、その平和を享受している間にヨーロッパ諸国の醸成が大きく変わり帝国主義的な風潮が広がり、アジア諸国が蹂躙されかねないような状況となり、日本も惰眠を貪っていられる状況ではなくなり、再び重商主義的な風潮への揺り戻しを強いられたというのが大きな歴史のうねりの中での幕末から維新だったということです。
そんな中での主要人物たちの動静に触れられているのですが、磯田センセイが大河ドラマ『西郷どん』の歴史考証で取り入れられていたように、徳川慶喜の国際感覚の鋭敏さについてこの本でも賞賛されておられて、慶喜、勝海舟の才覚で英仏を巻き込んでの内戦を回避したことこそが、今の日本の発展の原点とも言えると賞賛されています。
それに対して、西郷隆盛を始めとする征韓論を唱えたメンツは、朝鮮の背後の清やロシアの影響力を軽視し過ぎていたということで、その国際感覚の欠如を指摘されているのが興味深いところです。
また、明治維新のタイミングも絶妙だったということで、近代化が少しでも遅れていればフィリピンのように欧米のどこかの国に蹂躙されていた可能性は低くないということです。
ということで、この本を読むと幕末から維新期における流れがかなり立体的かつ構造的に理解しやすくなるということで、さすがは”知の怪人”佐藤優さんならではというところです。
ただ、佐藤さんの対談本にしては珍しく、分野がある程度佐藤さんの専門から離れているせいもあるんでしょうけど、かなり対等のやり取りが緊張感を生んでいるのもこの本の魅力かも知れません。
元々この本は幕末から日清・日露戦争あたりまでをカバーしようとしていたようですが、編集者が冊数を増やしたいからそうしたのかはゲスの勘繰りとして、今後もこのシリーズが何冊か続くようですので、それはそれで楽しみだったりします(笑)