数字は人格/小山昇

 

 

 事業として中小企業の経営支援をされていて『1日36万円のかばん持ち』など多くの著書を持つ小山さんが中小企業の「数字」に着目した経営について語られた本です。

 

 実はワタクシ、ずっと以前に10年程度中小企業診断士試験を受験していた時期があり、会計書類から経営状態を読み取るという科目もあって、苦戦していたことを思い出しますが、会計の数字というのは見る人が見ればどんな会社か、どんな経営状態にあるのかということが手に取るようにわかるようで、この本ではそういう会計上の数字の着目点をかなりいろんな側面で紹介されています。

 

 ただ、小山さんが支援されている企業の多くは、支援を受ける前にはほとんど社長が会計にタッチしていなかったということで、ちょっとした着目の変化で大きく経営状態を改善できたケースが数多くあるということです。

 

 そういう社長さんたちは、どうしても税理士のいうことに引きずられがちですが、税理士さんはあくまでも会計の専門家であって経営者ではないので、会計的な観点からモノを言っているのを、社長さんが経営的に受け取ってしまうことの弊害が多いようで、特に社長さんは最低限キャッシュだけを見ていれば、かなりの部分の経営上の問題を把握できるようです。

 

 どうしても借金を嫌がる社長さんは多いようですが、多くのキャッシュを確保することが経営上での攻めや守りに役立つということで、それなりの借り入れはむしろ経営の幅を広げるということなど、中小企業の社長さんが自己流で取り組んでいるとなかなか思いつかないところも数多く指摘されています。

 

 そんな中で、会計的な数字を見える化するための投資の重要性を繰り返し強調されていて、それによって改善点が数多く見えてくるということで、そういう部分には惜しみなくカネをつぎ込むべきだということです。

 

 この本を読んだだけでは足りないのかも知れませんが、経営者の方は数字を見る習慣をつけるという意味で、この本で指摘される観点に気付くことはかなり重要なようです。