「お金」で読む日本史/本郷和人

 

 

 近年、凄まじい勢いで著書を出版されている本郷センセイですが、今回のテーマは「お金」です。

 

 以前紹介した、節税本で知られる元国税調査官の大村大二郎さんの『お金の流れで読む日本の歴史』が、歴史のダイナミズムというか、おカネを絡めて語られることで、歴史がナマナマしく感じられることに感銘を受けて以来、おカネを通して歴史を語る本に興味をそそられ続けていますが、昨今屈指の日本史の語り部となった本郷センセイの手にかかるとどうでしょう!?

 

 この本では、鎌倉時代から、戦国時代、幕末に至るまでのトピックを取り上げて、歴史上の出来事にどれくらいおカネが影響を及ぼしていたのかを語られます。

 

 個人的には、司馬作品で最も気に入っている『峠』の主人公であった河合継之助が志した長岡藩の武装独立にどのように取り組んだのかについて、経済、財政的なところから語られているのがヒットで、スイス型の武装独立という、当時の長岡藩の置かれた状況から考えると夢想というか妄想というか、あまりに突飛な発想に思えるのですが、財政再建への取り組みから、ガットリング砲を始めとする武器調達をリアルな金額で示されると、成否の可能性はともかくとして、かなり緻密なそろばん勘定の上に成り立っていたことに驚かされます。

 

 また、赤穂浪士の討ち入りについても取り上げられており、赤穂藩が改易を受けてから仇討ちを成し遂げるまでの資金管理について、まずは領民に迷惑をかけないように藩札を回収したということにもオドロキですし、その後、討ち入りに至るまで武器調達や旧藩士の手当の調達など、リーダーとしての才能ばかりに注目されがちですが、実務家としても抜きんでた才能を兼ね備えていたことに感嘆させられます。

 

 どうしても歴史というと政治や社会情勢に目が行きがちですが、やはり経済という人々の営みに直結した実感しやすいモノを通してみると、それまであまり注目されなかった事象や人物がクローズアップされるということもあって、引き続きこういう取組に注目していきたいところです。