日本の少子化対策はなぜ失敗したのか?/山田昌弘

 

 

 「婚活」というコトバのオリジネーターであり、日本の家族にまつわる問題の権威である家庭社会学者の山田先生が、日本の少子化対策失敗の要因をブッタ切られます。

 

 昨今は日本の少子高齢化の問題は諸外国の政府機関の関係者や研究家から、ああはなるまいという反面教師としての関心を集めているようで、山田先生自身もそういった方々から日本の少子化についてのヒアリングを受けることもあるようですが、そんな中で、日本は何でこんなにも無策なんだ!?という身も蓋もない質問もあるようです。

 

 モチロン、無策だったわけではないようですが、この本の中では淡々と事実を紹介されてはいるのですが、厚労省を始めとする関係機関の迷走ぶりについて、よく読むとかなり辛辣に指摘されています。

 

 厚労省の施策というのが、先進国の中では比較的高く維持できている国々の中でもスウェーデンの事例を参考に施策の設計をされているようなのですが、まるでスウェーデンと日本との状況の差異を考慮しなかったようにすら思えるところで、むしろ施策がマイナスにすら働いているようです。

 

 山田先生は「親の愛情と、世間体意識、そしてリスク回避の三者が結合して、少子化がもたらされていると考えられる」と結論づけられているのですが、結婚を考える年代の若者たちの中で、「世間並みの生活」から転落する可能性を避けようとする意識が強いということで、結婚して「世間並みの生活」を維持するというビジョンが持てないことが大きな原因だということで、そういった意識も関係なく、恋愛関係になれば結婚につながるスウェーデンや、比較的そういった「世間体」の意識が高くない沖縄県における出生率の高さなどをあまり施策設計の中で考慮しなかったということのようで、特に日本では女性を中心として、将来のを見据えた駐留生活の保障がなければ「男女交際」すら躊躇する姿勢が顕著だということです。

 

 結局、そういうセーフティネットだったり、若者の不安を払しょくするような政策が必要なんでしょうけど、なまなかなことでそういう不安を解消することは望めそうになく、結局有効な対策もとれずに破滅への道を突き進むのでしょうか…