母のトリセツ/黒川伊保子

 

 

 黒川さんのトリセツシリーズの1冊で、今回のテーマは「母」です。

 

 「母」のトリセツというと、母娘の確執みたいな「毒親」的なモノを連想してしまいますが、黒川さんご自身、ムスメとしてお母様と、姑としてお嫁さんとも比較的良好な関係にあるようで、あとがきで「毒のある母を持つ人には、もしかすると生ぬるいトリセツかもしれないが、ご容赦いただきたい。」と予防線を張られているほどで、人によっては肩透かしと感じるかもしれません。

 

 ただ、冒頭で「基本的に、母は子を、服従させることで守ろうとしているのである。」と断言されているように、子どもへの愛情が「支配」と紙一重であることが、子どもとの確執につながってしまうが故に、子どもの側が母親の愛情を受け止めているということをアピールすることで、母親の「愛情」が暴走してしまうことを防ぐという方法論を提唱されています。

 

 黒川さんはかねてから女性が「共感」を求める志向が強いということを著書の中で再三強調されていますが、母親という生き物は、特に子どもからの「共感」を強く求めているということで、先に子どもの側から「共感」を示してあげると、「支配」しようとする意欲が削がれて、あまりうるさく自分の考えを押し付けてくるという行動が軽減されるということです。

 

 例えば、「いつになったら結婚するの!?」とか「いつになったら孫の顔が見れるの!?」といった子どもの側からするとイラっとしかねない言動も、「心配させてゴメンね…」と母親への「共感」を先出することで、かなりの確率でそれ以上の「攻撃」をさけることができると指摘されています。

 

 まあ、もっとドロドロした「毒親」をもつ人からしたら、確かに物足りなく感じるかもしれませんが、「母親への共感」というのは、そういう攻撃的な親に対しては忘れてしまいがちなことでしょうし、それをちゃんと思い起こすことが関係の改善につながることは間違いなさそうで、一定参考になるのではないかと思います。