同調圧力のトリセツ/鴻上尚史、中野信子

 

 

 『同調圧力』や『「空気」と「世間」』などの著書で「同調圧力」の息苦しさを語られてきた鴻上さんですが、今回は脳科学者で自称こじらせ系でご自身も同調圧力の弊害に苦しめられた経験を持つ中野先生が「同調圧力」について語られた本です。

 

 冒頭で鴻上さんが、「同じ方向を向いている人同士の対談は、実は面白くなかったりするんですよね。」と語られているように、中野先生自身も鴻上さんの同調圧力に関する著書を読んで激しく共感されていたということで、この問題に関する立ち位置はほぼほぼ似ているワケですが、中野先生がゼツミョーなバランス感覚を発揮して、同じ視点でありながら脳科学的な観点で語るなど、かなり深みを与えるものとなっています。

 

 やはり日本人の同町圧力の強さというのは、これまでの日本の環境に根差すところが大きいようで、例えば頻繁な災害の発生などをやり過ごすために脳内物質の分泌量が他の国の人とは異なるということで、ある意味環境への順応の結果ともいえるということです。

 

 ただ、日本の学校教育が不必要にその傾向を助長しているという側面は否めないということで、特にグローバルな人材を育成する上では、かなりのハンディになってしまっているという側面もあるようです。

 

 鴻上さんが再三「コミュニティ上手」というのは誰とでも仲良くできるようになることではなく、何らかの対立があっても決定的な確執としないようにすることだという指摘は印象的で、学校教育でやたらと仲の良さを強要されることは、長い目で見ると必ずしもプラスのことばかりではなく、中には要らぬ良心の呵責で精神を病む子どももいることを思うと、根拠のない「良心」の強要がもたらす弊害について考えてみるべきことが多いのかもしれません。