世間ってなんだ/鴻上尚史

 

 

 『「空気」と「世間」』や『同調圧力のトリセツ』など、かねてから「世間」がもたらす「同調圧力」について批判的な論調の著書を再三出版されてきた劇作家の鴻上さんですが、この本は週刊『SPA!』の連載のうち「世間」について語られたモノを集めたモノのうち、三部作の完結編なんだそうで、追々シリーズの既刊も紹介しようかと思います。

 

 特にコロナ禍の「自粛警察」など昨今は「世間」の「同調圧力」などマイナスの側面ばかりが取りざたされることが多いのですが、モチロン「世間」のもたらすプラス面もあるワケで、鴻上さん自身、海外での生活の機会が多いということで、電車が大体時間通りに動くことは、ある意味「世間」がもたらす「ちゃんと」しようという「同調圧力」の恩恵のわかりやすいカタチであり、そうじゃない社会に行くと、何かと不便に感じることが多いとは思います。

 

 ただ、日本においては「ちゃんとする」ということが過剰になることが多く、場合によってはコロナ禍における「自粛警察」のように暴走してしまうこともあり、ほかにもかつて周囲の世話を焼くといったメリットが都市化や核家族化などの社会環境の変遷によって失われた結果、「世間」の息苦しさばかりが残ってしまうことになったということを指摘されています。

 

 だからこそ、今こそある程度「世間」に見切りをつけて、「社会」と向き合うことが必要だということをおっしゃられていますが、どこまでそういう割り切りが浸透していくか、特に若い世代の行動に期待したいところです。