ワクチンは怖くない/岩田健太郎

 

 

 コロナの感染拡大直前に、クルーズ船の感染防止のために派遣され、忖度なくあまりに的を得た指摘を連発したために、厚労省の技官にクルーズ船から追い出されたという伝説を持つ、感染症の専門医である岩田センセイが語るワクチンの効用です。

 

 コロナ禍でも露わになったように、感染症対策、特にワクチンというのは大きなおカネが動くだけあって、純粋に感染拡大防止や患者のためといった観点ではなく、利権が絡むポジショントークや、声の大きさといった政治的な色彩を帯びてくることもあって、ワクチンを受ける側としてもそういった夾雑物に惑わされずに、純粋にワクチンを受けることによってうける感染防止というメリットと、副作用の大きさというデメリットを冷静に比較した上で、前者の方が大きいときにのみ接種を受けるという科学的な態度が重要だとおっしゃいます。

 

 この本が出版されたのが2017年で、コロナ禍の影もカタチもない頃なので、コロナワクチンについての言及は当然ありませんが、子宮頸がんワクチンなど、その効用と副作用について大きな議論のあったワクチンの事例について、効用とデメリットの科学的な比較を紹介されています。

 

 ただ、難しいのはメリットとデメリットは、個人の身体の状態と価値観という相対的なモノに左右されるだけに一概に言えないワケですが、声の大きな「専門家」は得てして利権や学界におけるポジションを意識したポジショントークをしていることが多く、さらにはメディアは、多くの場合、専門的な知見に基づいた報道をしているワケではないことが多く、ポジショントークの流されたり、耳目を集めそうなことに肩入れしたりと、メリット・デメリットを判断する上ではほとんど役に立たないということをキモに銘じておいた方がよさそうです。

 

 ということで、主治医やセカンドオピニオンなど、自分が冷静な判断をできるだけの情報を自律的に集めなくてはならないというのが気にはなりますが、やはり自分のカラダを守るのは最終的には自分だという原点に立ち返ることが肝要なようです。