危機の読書/佐藤優

 

 

 最近、”知の怪人”佐藤優さんの読書指南が、かなり実践的というか、事象があまりに複雑化していて、余程の人でなければ読書を現実に応用することが難しくなっていると感じているのか、かなり「即物的」になってきているような気がします。

 

 この本で取り上げられているのが、

  内村鑑三『代表的日本人』

  ヨゼフ・ルクル・フロマートカ『なぜ私は生きているか』

  宮本顕治『鉄の規律によって武装せよ!』

  アーネスト・ゲルナー『民族とナショナリズム

  手嶋龍一『鳴かずのカッコウ

  斎藤幸平『人新世の「資本論」』

の6冊で、ワタクシ自身既読なのは『人新世の「資本論」』のみと、割と古典と言える著作が多くなっている印象で、やはりそういう著作に教訓として読み取るべきものが多いということなのかも知れません。

 

 コロナ禍~ウクライナ侵攻を契機とした世界の分断という流れを受けて、やはり一番目を引くのが『民族とナショナリズム』で、コロナ禍で、それまでのグローバリズムの流れが急停止し、ロシアのウクライナ侵攻を契機として、西欧諸国とロシア、中国といった権威主義的な国家群、グローバルサウスと言われる国々との間での分断が露わになり、ナショナリズムが再び台頭してきたワケですが、そんな中でコロナ禍を契機としたと思われる黄禍論がアメリカで継続しているというのが、日本人としては気になるところですが、『民族とナショナリズム』でも青色人という概念を持ち出して、ナショナリズムにおける人種差別的な動きについての指摘があり、ある意味そういうモノは普遍的なところがあるようで、こういった本からの教訓というのも今なお有効なんだと思います。

 

 最終章に、『平成史』を共に出版した片山杜秀さんとの対談が諸州されているのですが、やはり日本におけるウクライナ支援一辺倒の状況を、ウクライナにおける「皇国史観」という概念を持ち出されて危惧されていますが、アメリカにおける黄禍論じゃないですが、あまりにアメリカ追従一辺倒で手のひらを返されたらどうなるんだろうか…と考える人が少なすぎることには、やはりちょっと気になってしまうところです…