ウクライナ戦争の嘘/手嶋龍一、佐藤優

 

 

 ロシアのウクライナ侵攻以降、雨後のタケノコのごとく、ロシア専門家があまり妥当性があるとは思えないコメントを吐き散らすのに辟易していた中、この人たちがどういう見方をするのかを知りたかったにも関わらず、なかなか世に出なかったのは”知の怪人”佐藤優さんが病でかなり危険な状況にあったからだったんですね…

 

 ただ、それだけでもなくお二方ともメディアにおける西側からの希望的観測一辺倒の報道に戸惑いがあったところもあるようで、お二方が事実に基づいたプレーンな見方をしているとして意見を表明するとロシア寄りとされてしまうことで、この本を出すタイミングを計っていた部分もあるかもしれません。

 

 メディアがロシア国内の報道について、北朝鮮での報道になぞらえて、不都合な報道は避けられているといいますが、実は西側の報道も五十歩百歩みたいなところがあることには気づいていない(フリをしている!?)ようで、それが日本だけの現象だったら、所詮日本のメディアなんてこの程度…と思うのですが、西側のメディアが全般的にこういう傾向にあって、特にフェアな報道姿勢で知られるアメリカのメディアがロシア:悪vsウクライナ:善の二元論に終始しているところに、かなりの危うさを感じさせます。

 

 また、ウクライナ侵攻以降取りざたされるようになったグローバル・サウスの動向についても触れられていて、国連における票決の結果を見ても、必ずしも西側の意向が浸透しているワケではなさそうで、この本では西側の「孤立」が顕著になってきているとまで言われています。

 

 結局、アメリカはロシアがウクライナ侵攻が泥沼化することで、疲弊して行き勢力が衰えることを都合よくみているようですが、バイデン政権の外交の劣化も顕著となている部分もあるようで、必要以上に追い詰めてロシアの核兵器使用につながるリスクが高まってきていることもあるようで、西側の価値観から離れてプレーンに物事をみることで、核兵器使用のリスクを如何に低減するかというところに英知をフォーカスしてもらいたいところです。