ロシアのなかのソ連/馬場朝子

 

 

 6年間ソ連に留学された経験があり、帰国後NHKに入社し、ソ連、ロシアについてのドキュメンタリーなども手掛けられた方が語られるロシア論です。

 

 この本は、ロシア人のメンタリティを、よく見られる行動などを踏まえて紹介し、そういうところからウクライナ侵攻につながった原因について語られるという構成で、以前、紹介したロシア研究家の小泉悠さんの『ロシア点描』に、趣旨といい、書かれている内容といい、かなり似たところが多いのですが、それだけに信ぴょう性が高いことをうかがわせます。

 

 やはりロシアはかなりマッチョな志向が強いということで、プーチンのような力強さをアピールする指導者が受け入れられやすいということで、そういう「力強さ」を訴求する政策の一つとしてのウクライナ侵攻があるということを指摘されています。

 

 2014年のクリミア侵攻以降、西欧諸国との軋轢が取りざたされ、ウクライナ侵攻で決定的になったのですが、その根底には西欧諸国への不信があり、その遠因にはソ連崩壊時に、一時期広がった「自由」で無政府状態に近い混乱をきたしたことで、かなり勘違いに根差したものであると西欧陣営にいる日本にいると思うのですが、民主主義というものへの抜きがたい不信ということがあるようです。

 

 むしろ、一定の抑圧はあるにせよ、ソ連時代の「安定」を強く志向しているようにも思え、そういう”お上”の強さを求めるのは、中国や日本などと類似しているところもあるんじゃないかと感じます。

 

 ウクライナ侵攻の落としどころを見失っている現時点ですが、可能な限り早く収束させなければならないのは間違いないところで、そういう意味でロシア人の根底に流れるメンタリティを認識するのは重要なことなのではないかと思えます。