異端の人間学/五木寛之、佐藤優

 

 

 先頃、2015年出版のこの本が書店で面出しのディスプレイになっていたのですが、なぜなんだろう…ということもあって手に取ってみました。

 

 しかも、作家の五木寛之さんが何で”知の怪人”佐藤優さんと対談本!?というギモンがあって、嚙み合うんやろか…というギモンもあったのですが、五木寛之さんには『さらばモスクワ愚連隊』という著書があってソ連時代から度々ロシアに訪問されていて、ロシアに造詣が深いことと、『親鸞』を執筆されていただけあって宗教への造詣も深いということで、かなり佐藤さんと重なり合う部分が多く、数多い佐藤さんの対談の本の中でも、深遠な部分で噛み合った指折りの作品となっているように思えます。

 

 冒頭のワタクシのギモンについて、ロシア人の宗教観や文学を交えてロシア人のメンタリティについて語られていて、2014年のクリミア侵攻にも触れられていることから、ウクライナ侵攻と絡めて、書店でも大フィーチャーされていたということのようです。

 

 元々日本人は陸軍が仮想的としていたことや、共に西欧諸国の進化を追いかける後進国で日本が少し後を追いかけていたことから、ロシアへの関心が高く、二葉亭四迷などロシア文学の影響を強く受けた作家も多かったようで、かなり日本人のロシアに対するシンパシーもあったというのは意外で、昨今、特に戦後の冷戦期以降ロシアへの関心が低下していることを、お二方は問題視していて、プラスの側面でもマイナスの側面でも、ロシアに対するそれなりの見識を積み重ねておくべきだと指摘されています。

 

 ある意味、近代日本の形成において欠くべからず存在だったとも言え、西欧諸国とは異なる独自の関係性もあるロシアということで、ただ単に西欧諸国の影から非難するばかりでなく、建設的な関係性を築くヒントが隠されているともいえるこの本が、責任ある層に読まれたらいいんじゃないかと思います。