プーチンの野望/佐藤優

 

 

 ロシアのウクライナ侵攻以降、ロシアの情勢に通暁している”知の怪人”佐藤優さんのご意見があちこちで求められるはずだと思って、ネットメディアなどを見ているのですが、あまり積極的にそういう発信をされているように見えないのですが、メディアの多くが、悪のロシアに対応する善のウクライナというわかりやすい構図に当てはまるようなコメントを求める中、そういう単純な構図で割り切れない意見を述べることで、ミョーなハレーションを避けようとしているようにも思えます。

 

 この本は帯には”緊急出版”と謳われていて、佐藤さんのウクライナ侵攻に関する見解を求める向きは多々あったと思うのですが、書き下ろしというワケではなく、これまで様々なメディアに執筆されてきたプーチンに関するモノをまとめてプーチンに人となりや目指す方向性が理解できるようになっていると共に、ウクライナ侵攻後に書かれたと思われる昨今の情勢についての内容で構成されています。

 

 特に日本でのメディアの報道では、不思議な程、クリミア併合やその結果としてのミンスク合意について触れられていなくて、ウクライナ侵攻自体がゼレンスキー政権による合意の破棄が引き金になっていることも知らない人が多いんじゃないかと思えます。

 

 まあ、それで武力行使による内政干渉というのは今や論外なのはモチロンなのですが、ウクライナNATOに取り込まれることにより、ロシアの軍事的な装備に関する情報が筒抜けになってしまうことを含め、かなりプーチンとしては差し迫った事情があったことを紹介されています。

 

 またゼレンスキー側としても、新ロシア的な東部2州を切り離しての停戦という落としどころもあったはずなのですが、NATOの後押しを得てクリミアまで回復しようという野望も見え隠れし始めており、終わりのない戦争の様相を呈してきていて、NATOが巻き込まれての西側との全面戦争のリスクも見えてきているということで、かなりリスクレベルが上がってしまったことを指摘されています。

 

 その解決の糸口として、出版社の運営元である創価学会の貢献への期待を指摘されているのはご愛敬ですが、あまりにも単純すぎる勧善懲悪を演出したがる西側メディアの報道に違和感を感じている人は、一読されてみては如何でしょうか!?